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七ヶ浜町立遠山保育所の建築事例写真
七ヶ浜町立遠山保育所
髙橋一平建築事務所

七ヶ浜町立遠山保育所

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公立保育所の建替え計画である。東日本大震災から約半年が経つころ、七ヶ浜町による「創造的復興」事業の第一弾として始まった。
近くに海をのぞみ、自然環境が豊かで平穏な地域であったことから、そうした場所の雰囲気を建築が掻き乱すことなく環境と一体化し、一方で町のモニュメントとして一体化してもなお堂々と残る永遠性が感じられるあり方を考えた。
建築の背を低く高台の上に横たえ、野原を大きく取り囲む。すると水平方向の広がりと、環境に対し控えめな高さの外観が生まれる。また、園庭は囲まれていても、周囲にある七ヶ浜の自然風景が庭に取り込まれるよう感じられる。建築のおよそ半分は片側の壁が開放され、気候の良い時期には外部と連続できるつくりとし、待合ラウンジは屋根のみを掛け、公園のあずまやのようにくつろぐことができる。子どもは自由に中も外もかけ巡り、何より保育園全体が次第に少しずつ建築に見えなくなっていく、その効果を期待した。すなわち、建築がこれまでの存在性を少しだけ解放され、自然に近づき、環境と一体化していく風通しの良い状態。古代遺跡にも近いあり方である。言い換えれば、子どもを守るだけの箱形の建築ではなく、どちらかというと公園の大きなパーゴラ、そこで子どもが大人と一日を過ごす場所がありそれが保育所となる、という格好である。
保育所に必要な空間は、町の人々と一緒に幾度もの話合いを経て、飛び出した要望を実直に並べていった。結果、建築としては幾分不規則な形状になった。この一回性の設計プロセスにより、町の人々は自宅の民家の庭や身の回りの環境を直感的に整えていくのと同じ感覚を募らせ、例えば都市が、人間の活動をダイレクトに映し出すよう発達し次第に都市固有の価値を形成していく具合に建築がつくられていく。特に子どもにとっては、色んな年齢の園児や大人が集まる小さな集落や町みたいに感じられるはずだ。とてつもない速さで設計が進む中、様々な要望がスプロールを起こしあわや破綻しそうな集落を守り続けるには、低空に四角く切り取られた園庭が、集合における普遍的な環境として役立った。そのおかげで外周部がどれほど混沌としても、要素の意味が希薄になり、そのひとつ一つがなぜそうなっているかなどわざわざ思い描かさず、全体がある環境として捉えられる。それによって、この保育所を訪れる町の人々の日常に、ある種の旅のような解放的な体験を少しだけもたらすことができるからだ。
建築は、与えられてそれを消費するというようなものではなく、そこでつくるものだ。初めから出来合いのものをそのまま応用するのでなく、状況に応じ最初から組み立てることを心がけた。ぎらぎらとした外観も、人々の参加も、これまで繰り返し用意された典型的な保育園建築からの決別だ。ここでは子どもも大人も花や草木や鳥も太陽も雨も、散らかった机や壁の絵も遊びも、ひとたび保育が始まればすべてが一体化し、色鮮やかにきらきらと輝くのだ。
こうして、色んなことがあったけれどみんなで苦労して一緒につくったという事実が、いずれ町の歴史の一つに加わることを待ち望んでいる。
(新建築2013年12月号寄稿)

髙橋一平建築事務所のプロフィール写真

髙橋一平建築事務所

髙橋 一平

設計事務所会員
設計事務所会員とは
主に建築物の設計監理や建築デザイン等を行っている建築設計事務所や建築家を示します。
通常営業中です
竣工年
2013
部屋数
8以上
家族構成
その他
構造
鉄骨造
敷地面積
300㎡以上
延床面積
300㎡以上
外壁仕上げ
ステンレスシート
屋根仕上げ
シート防水
内装仕上げ
石こうボード+EP塗、シナベニヤ等
床仕上げ
コンクリート、フローリング等
予算帯
5000万円以上
所在地
宮城県
ロケーション
郊外