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LiVESの家
記事作成・更新日: 2016年12月13日

床に段差をつけて過ごし方の幅を広げた
クリエイティブなLDK

西谷の家

玄関からリビングの各スペースの床に段差を設けたT 邸。食の場面で大きな効果があるという、大胆なデザインの魅力とは?

text_ Makiko Hoshino photograph_ Kaori Nishida

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「この家に来てから家族が自然とLDKに集まるようになりました」と奥さま。キッチンは丁度テーブルになる高さ。料理の受け渡しがしやすい点でも役立っている。

西谷の家

(横浜市保土ケ谷区)

設計
MDS 一級建築士事務所
住人データ
夫(38歳)会社員、妻(33歳)主婦、長女(3歳)、次女(1歳)

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色に深みのあるナラ材の床が穏やかなムードを醸し出す。ソファは「カリモク」のビンテージ。

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シンプルで愛嬌のある外観。外壁は1~3階部分で塗り方を変えて趣を出している。

山梨の悠々とした自然の中で育ったご主人。お子さんを授かり、手狭なマンションから住替えを考えたとき、故郷と似た環境であることを重要視したという。

将来、子どもが独立したとき、帰ってきてほっと安心できる”実家”でありたい。そのために少しがんばってでも、のどかな場所に一軒家を新築したいと思いました(ご主人)

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”世界でふたつとないもの”を目指して、土間と同じモルタルで造作したキッチン。シンプルなシンクがマッチしている。

選んだのは川の向かいの敷地。せせらぎや鳥が木の実をついばむ姿など、都会とは思えない光景が広がる。設計は、敷地の特徴を活かしたさまざまな事例で知られるMDS一級建築士事務所(以下、MDS)にオーダー。「過ごし方に幅が出る住まい」「訪れた人が使いやすいキッチン」「川の風情を取り入れた暮らし」という3点を希望した。

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オープン棚にNALGENEのボトルなど、デザインと機能性を兼ね備えた収納グッズが並ぶ。

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ル・クルーゼのCOUSANCES、曲げわっぱの弁当箱、グローバルの包丁などを愛用している。

そこで出た答えが、玄関、キッチン、ダイニング、リビングを間仕切りのない大空間におさめて、それぞれの床に段差をつけるというプランだ。リビングの窓際は一段上げてL字型の廊下をつくり、同じ高さでデッキを設置。結果、LDKに4層の床が生まれ、色々なところに”居場所”ができるようになった。

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朝日が心地良く降り注ぐ南東の階段。窓辺をテーブルにして親子で朝ごはんを食べることもある。

ともに料理好きで、週末によくホームパーティーをしているTさんご夫妻。ユニークな設計は、そんな食のシーンでも効果を発揮している。

グラス片手に廊下に腰をかけるなど、床に段差があることで、思い思いにくつろいでもらえるようになったのが嬉しいですね(奥さま)

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玄関の延長にある土間のキッチンは、庭につながり、動線がスムーズなのも利点。ご主人も料理好きで、休日は台所に立ち、パスタやサンドイッチをつくるそう。

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キッチンの壁に、葉山の「桜花園」で買った古い足場板で棚を造作した。福岡の「望雲」の陶器やイッタラのティーマのプレートなど幅広くコレクションする。

玄関と一体化させた開放的なキッチンは、誰もが気兼ねなく利用できるつくり。壁一面にオープンな棚を造作しているので、客人が自由にカップや皿を取り出せる。リビングに対面させ、料理中でも会話ができるようにしたメリットも大きい。

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天井とLDKの壁は梁と白い壁、古材の棚とのバランスを考えてダークブラウンの塗料をペイント。ホームパーティーのときは階段や2階も活用している。

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リビングのまわりにデッキを設置。あたたかい季節はブランケットを敷いて、アウトドア気分を楽しむことも。廊下の下部にはCDや文庫本を収納している。

ダイニングからリビング、デッキまでを見渡せるため、みんなとおしゃべりをしながら料理や片付けをしたり、冷蔵庫から飲みものを出してデッキを走り回る子どもに渡したり。コミュニケーションを取りつつ家事ができるんです(奥さま)

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壁を設けずリビングとつながりを持たせた2階スペース。友人が訪れたときのゲストルームにするほか、お雛様をディスプレイしてリビングから眺めることも。

リビングの床のレベルを上げることは、視覚的な効果も生んでいるとMDSの川村奈津子さんは話す。

リビングの視点が高くなることで、川沿いのフェンスの圧迫感を解消し、窓越しの景色が開けるように工夫しています(川村さん)

ニーズをすみずみまで叶える住まいに、大満足しているTさんだ。

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3階の寝室兼子ども部屋。下に浴室があるため一段高くした部分を寝室、手前を子ども部屋に利用。階段隣の部分は、床と同じ高さで造作したセパレートする机。

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3階階段から寝室の書斎コーナーの眺め。床を椅子に、手すりを机としても使えるようにしている。オープンなので1階のLDKともつながりを感じられる。

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「桜花園」でひと目惚れした古い扉を2階の出入口に使用。

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〈物件名〉西谷の家 〈所在地〉横浜市保土ヶ谷区 〈居住者構成〉夫婦+子ども2人 〈用途地域〉準工業地域 〈建物規模〉地上3階建て 〈主要構造〉木造 〈敷地面積〉60.79 ㎡ 〈建築面積〉36.46㎡ 〈各階床面積〉1階 33.78㎡ 、2階 23.05 ㎡、3階 25.14 ㎡ 計 81.97 ㎡ 〈建蔽率〉59.98 %(許容 60%) 〈容積率〉134.8%(許容 200%)〈設計〉MDS 一級建築士事務所 〈構造設計〉大賀建築構造設計事務所 〈施工〉仲野工務店〈設計期間〉6ヶ月〈工事期間〉8ヶ月〈竣工〉2014年


※この記事はLiVES Vol.81に掲載されたものを転載しています。

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