どのように暮らし、どのように使うのか。たとえば住宅。
椅子は「座る」ということを前提に考えられているように、
住宅は「暮らしていく人」のことを考えなければなりません。
デザインや素材などは、住宅を構成するいくつかの大切な要素ではありますが、
「どのように暮らしていくか」を、私たちも一緒になって考える必要があります。
家族構成もそうであるし、暮らしていく場所の問題もある。
または子どもが独立するまでの時間で考える場合もあります。
住宅に対する要望を言葉で説明することは難しくても、
どのように生活していくかを、まずはじめに考えてみませんか。
このように暮らしたい。それを編集するのが建築家の仕事。
暮らしていく人々が大切にしていることを整理整頓していくこと。
答えは決してひとつじゃないし、納得や満足もたったひとつのものではありません。
何かを選んで何かを止めるという択一のことでもありません。
時として、予算は要望を積み重ねる足し算かもしれません。
収納スペースが欲しい、しかし予算が折り合わない。
こんな時には欲しい収納量よりも容量が少ないけれど、
予算の範囲内に納めてしまうといった、
割り算や引き算を当てはめて正解に近い回答を導きだしたりします。
だとすれば、住宅だけでなくカフェや店舗の設計も同じ考え方です。
時間を過ごす場所としてのカフェや、食事を楽しむための店舗も、
どのように利用していただくかを、考えることから始めます。
住宅は特定の人々が暮らす場所としての機能を求めますが、
商業施設は不特定多数の人々へ、「どのように」を訴求していくことになります。
建築は特別な何かではなく、
大衆や社会の中でとても身近に位置しているモノでありコトなのだと考えているからこそ、
依頼主の心の奥底にある何かを敏感に感じ取っていかなくてはならないと思うのです。
建築設計という私たちの仕事は、
そこで起きるであろうコトを編集していく作業かもしれません。