【メッセージ】
家のデザインは、空間=スペースデザインであるとともに、時間=ライフデザインでもあると思っています。
家は建ててから「人生」を通してつきあい続けるものです。それだけに家を建てようと思ったときの状況だけでなく、どれだけ将来のことまで予測して準備しておけるかどうかという想像力が求められます。
例えば、家族構成の変化にも柔軟に対応できる家でありたいと思います。子供が生まれ、育ち、親や兄弟と一緒だった部屋から個室を持つようになり、やがて巣立ったあとまで、ひとつひとつの時代にふさわしい部屋であるためには、リフォームの容易な「構造」やプライヴァシーの度合いを調整できる「遮音性のある壁」を新築のときから考えておかなければなりません。
また、終の住処であるためには、必ず訪れる身体機能の低下を見越して、バリアフリーのことも考えておく必要があります。年齢を重ねるほど、安心の器としての家の重要さは増していくものですから。
ライフには「人生」という意味もありますが、「日々の暮らし」という意味もあります。人生のような長い時間でなくてもライフデザインの視点は大切です。
例えば、時間を感じられる家であること。夏の暑さ、冬の寒さ、春の気持ちよさ、秋の豊かさ、それらを均一な室内環境としてしまうのではなく、それぞれの良い点を活かし、悪い点をブロックするようなバランスのとれた家としたいと思います。朝食は必ず家族一緒だから、食堂は朝の光を優先に、など日々の暮らしのなかで時間=ライフデザインの視点から見直すと豊かになることはたくさんありそうです。
日常の掃除から定期的なメンテナンスまで、家は必ず何らかの手間がかかるものです。そうしたお手入れも初めから考えておければ面倒なことでなく、家に対する愛着が増すきっかけとなります。古びて風合いが出た素材を愛でたり、設備機器を更新してリフレッシュした気分になったり、家が与えてくれる気持ち良さは長く住んでこそもたらされるものです。
広さや豪華さに目を奪われることなく、ライフデザインの視点から人生の節目ごと、季節ごと、時間ごとに彩りを変える空間をつくりだすことで何重にも異なった表情を見せてくれる家、が私たちが考える理想の家です。
【プロフィール】
1969 東京都出身
1994 東京理科大学 工学部 建築学科 卒業
1995〜1998 上野・藤井建築研究所
建築
鎌倉の住宅(神奈川)
赤羽の集合住宅(東京)等
1998〜2000 PHスタジオ
建築、ランドスケープ
名古屋芸術大学 美術学部校舎、学生食堂棟(愛知、増改築)
芝3丁目ファーストビル 外構デザイン(東京)等
アートプロジェクト
「船をつくる話」(灰塚アースワークプロジェクト、広島)
「ミュージアムシティー福岡」(旧御供所小学校+天神ソラリア、福岡)
「環境と芸術-エコロジーの視点から」(国立国際美術館、大阪)
「democracy!」(Royal College of Art ,London)
「ヌプカの家」(札幌ドーム外構アート、北海道)等
2001〜 春日部 幹建築設計事務所
建築
浅草橋の集合住宅(東京、CFT造12F)
上野の集合住宅(東京、SRC造14F)
武蔵浦和の集合住宅(埼玉、RC造8F)
本駒込の住宅(東京、S造5F)
有料老人ホーム ヒルデモア三渓園(神奈川、改修)
有料老人ホーム メープルハイム苑華(福島、RC造+S造6F)等
アートプロジェクト
「20minutes Walk」(越後妻有アートトリエンナーレ2003、新潟)
「branch project」 (同上2006、新潟)