この住まいは兵庫県の南西部、古くから塩田で栄え、あの赤穂義士でも有名な赤穂市に建つ、築200年以上のお寺の庫裏のリノベーションである。
瀬戸内海の沿岸に位置する地域のため一年間を通して晴天の日が多く、
冬場の平均気温も5℃程度だが、もとの建物は築200年ということもあって、
底冷えがしたり、壁や建具が多く、玄関から奥へと進むにつれて、
十分な採光が確保できていない閉鎖的な間取りであった。
建主からの要望は、耐震改修を行いつつ、これからの夫婦の終の住処として、
当時からある石庭、あるいは裏山の緑を活かしながら、気持ち良く楽しく
暮らしていける住まいをつくることであった。
まず、既存の状態で有効な利用がなされていなかった玄関部分の
天井をはずして梁を現し、土間空間とすることで、
玄関から裏山までのつながりを意識したおおらかな空間を考えた。
それとは対照的に、パブリックなスペースについては、耐震補強をしながら
既存の建具や壁を減らし、一室空間として計画した。
それによって石庭や裏山の緑を連続させることができ、
もとは暗い場所であった建物奥のスペースも、
北側のほのかな光や南側の明るい光が拡散されながら届く、
気持ちの良い空間となっている。
耐震性についても、構造設計家との綿密な打ち合わせのもと、建物の良さを
損なわないように配慮しながら、しっかりとした補強を行った。
また、寒さへの対応として、壁や床への断熱材や木製建具やペアガラスなどを
施工している。
代々受け継がれてきたこの建物と周辺環境の歴史を継承しながら、
これから先もよりよく住み継いでいけることを意識して計画した住まいである。
所 在 地:兵庫県赤穂市
構 造:木造平屋建
建築面積:130.28㎡
延床面積:130.28㎡
写 真:富田英次
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