京都市の連棟長屋の中央に位置する住宅の改修プロジェクト。
幹線道路から脇道、そして私道である小路を経て長屋の1室へと、どんどん細く狭くなっていく京都らしいスケール感の中に、開放的な「私の居場所」を小さくも実現することを目指しました。
LDK・洗面スペース・脱衣室・浴室という多機能が集まる1階は、既存の構造柱位置から3つの区画にわけてあえて壁で囲い、ボリューム化。その壁には温かみと素材感のある木板仕上を施し、小路を挟んで並ぶ連棟長屋の規則性である均等割の区画を目地割りへと反映しています。その壁にフックやスイッチ、各室への入り口など、生活に関わる小物や活動が見え隠れする計画としています。そういった内外の秩序の間に、天井高さの高いリビング・ダイニングを計画することで、小路から引き込まれた先にあるポケットリビングのような籠もった感をつくり出し、落ち着いた「間(あいだ)」に住まうことを提案しています。
写真クレジット : 大竹央祐
小さな床面積の長屋では一般的に、壁際にキッチンや浴室が計画され、余った中央がリビング・ダイニングとして計画されることが一般的です。この住宅の既存状況も同じでした。しかし、これだと生活が壁向きとなり、奥行きも生まれないので、実面積以上の広さを感じることができません。故に窮屈に感じることもしばしばあります。この計画では、住み手の身体寸法からキッチンを室内に寄せて、あえて廊下をつくり、独立したキッチンスペースを計画することで、小さくも奥行きの創出と気持ちの切り替えのできる豊かさを獲得することに成功しています。
京都市の底冷えする冬の季節も暖かく過ごしたいという住み手の要望に対し、コストバランスを考えて、適切な断熱区画計画と熱貫流計算の上、ZEHクラスの断熱改修を行いました。室内の木板仕上や漆喰仕上が湿度を調整し、夏・冬共に快適性の向上に取り組みました。
株式会社 明和建設