岡山県岡山市内に建つ2世帯住宅である。
敷地の周囲では農作物が栽培され、のどかな田園風景が広がる。隣接する建物がなく、敷地にはほとんど影が落ちず常に光があたる良光な環境であった。田園風景の大らかさを壊すことなく、主張し過ぎることなく趣を感じさせる建物を目指した。
建物は、地盤面より立ち上ったコンクリートで1m浮かせている。この地で数年前に起こった豪雨への配慮を考えてのことである。建物を浮かせることで万が一の水害からの回避と通風、湿気対策にも貢献する。さらに、屋内に取り込まれる自然採光が、風の通り道と相まって快適で健康的な空間を作り出している。
親世帯と子世帯は、生活時間の違いを考慮し玄関を2つに分けた。北側の道路面に子世帯、東面に親世帯の玄関を配置し、2世帯の境界は共用の客間や中庭によりゆるやかに分節され、ほどよい家族の距離感を生みだす。
アプローチにはどうしても階段が必要になる。そこで、上りやすいよう盛土でマウンドをつくり階段の段数を極力減らすように考えた。
このマウンドは建物の下部にも配し植栽によるグランドカバーを施した。田園から敷地への連続性を植栽に委ねる事により、周辺風景との融合が適えられる。
子世帯は段差により各室が仕切られる。玄関と同じ高さに寝室、子供室、水回りを配し、LDKが1.2m高くなっている。この段差により天井高を確保することと、開口を多くとることができた。開口からは中庭を通して、自然光・風・緑が効果的に室内へと導かれる。
親世帯では逆に段差をなくし、できるだけ昇降を少なくするように考えた。
段差によって生まれたいろいろな場所は、プライバシーを保ちながら中庭を介してつながり、ほど良く家族の気配を感じることができる。
建物は風や光を纏い風景に寄り添う。それによって、ここでしか得ることのできない豊かさを享受できるものと考える。
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