伊豆高原の斜面に建つ築30年の別荘のフルリノベーション。思い入れがあったこと、急傾斜地で基礎の解体・新設に多大なコストがかかることから、リノベーションを選択した。
解体し骨組みを見直すと、「斜面に沿った大屋根に守られたスキップフロア」という個性が浮かび上がった。その個性を活かして、大屋根の下、内と外とに多様な居場所をちりばめ、それぞれの空間を立体的に繋ぎ直した。
眼下に雄大な海の望める風景、豊かな緑に囲まれた敷地の特性を享受できるように、各場所からの眺望を仔細に検討した。
温泉の出る浴室は2階に移動し、壮大な眺めと開放感を味わいながら入浴が出来、足湯を楽しむリラクゼーションスペースとしても使われている。
ご友人一家とご一緒に、など多家族で使用することも多く、家族間のプライバシーを保ちながら立体的に繋げる事で、部屋で分断されることなく、共に居ることを感じられる場として計画した。
同時に立体的な空間の繋がりは、周辺の緑、海、空の色が相まった光を室内に導いている。
外の居場所として、外構のリノベーションも行った。
テラスを拡大し、ピロティ下にデッキを設け、草地広場をつくり、建物の周りを一周できる石敷きの通路や階段を設える事により、高低差のある様々な居場所を点在させ繋ぎ、滞在性と回遊性を高めた。都心で土や草を感じることの少ないご家族が、緑の中の散策を楽しみ犬と駆け回れるような庭となった。
性能面では耐震補強によって、耐震性能Iwが静岡県の基準である1.2を上回った。
また断熱性能では断熱等級4相当を確保し、気密も高め、部分的に除湿や侵水対策も行い、快適な住環境を重視した。
施工:大同工業
構造設計:長坂設計工舎
写真:鳥村鋼一