高低差のある2つの道路に挟まれた敷地に建つ平屋の住宅。もともとこの場所で事業所を構えられていたシンエイ工営様の、社長の終の住み家兼事業所として建て替えのお話を頂き設計させて頂きました。敷地に面する道路の一つは生活道路でもう一つは2m近く低い位置にある片側2車線の幹線道路。アプローチは生活道路側ですが、事業所としての印象を与えるように幹線道路側から見える姿を意識して、特徴がありながらどちらから見ても同じ印象を感じるカタチを提案させて頂きました。
事業所としての機能は8帖一間で最小限でありながら住宅に求められた特殊な条件として、ご自宅で年に数回テナントを集めてお店を開いたり、ピアノリサイタルを開催したりと人が集まるイベントをできることがありました。そのため、リビングスペースを広く取り、また空間自体が窮屈にならないように吹き抜け空間を作りました。また、少しでも広がりを感じられるようにテラスと中庭を作って外部空間とつながるようにしています。特に中庭はピアノリサイタルを聞く人の視界が止まらないようにと思い、ピアノを置く位置関係を意識して配置しました。出来上がっていくと、この2つの外部空間を背景にその時々でピアノを移動させるようにするということを仰って頂き、提案したことが正解だったと感じることができました。またテラスは人が多く集まった時の息抜きをする場所として提案させて頂きましたが、幹線道路側のため人目が気になるところですが、高低差があることで視線が入りにくい位置になり、また植栽を植えて目隠しをすることで室内空間に近いくつろげる場所として使うことができるようにしています。
内部構成はリビングとなるホールを中心に事務所、和室、寝室、水廻りを周囲に配置し、和室の上にはホールの吹き抜けに続くロフトを作りました。ロフトは物置として普段使いながら、リサイタルの際には上からも見ることができるようにというこも考えた形となっています。またホールの天井は木板張にして緩いカーブを描き、音の反響が和らぐ形としています。またハイサイドライトを配置することでホールが暗くならないようにしています。
この住宅ではシンエイ工営様が加盟しているFPの家のモデルハウスとしても使用するため、高気密高断熱住宅となっており、また断熱パネルで作る必要があるため納まりを検討しました。通常のFPの住宅とは少し変わった空間が多く骨の折れる作業も多々ありましたが、住宅モデルのひとつになってもらえると嬉しいです。
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