東京都葛飾区。
下町の商店街沿いに建つ、創業90年の老舗葬儀社(セレモニーホール)の計画である。
建物の脇に接する区道の拡幅工事により改築することとなった。
核家族化、高齢化など現代社会の多くの影響によって葬儀に求められる形式や意味合いが変化しつつある。大勢の人によって送り出される形式から、身近な家族や親しい友人が集まり、少人数でゆっくりと時間をかけてお別れすることがより望まれるようになってきている。
そういった葬儀のあり方に適応するように、厳かで緊張感のあるスペースから、住宅のようなより親しみのある落ち着いた空間をクライアントと共に目指してきた。
それとともに、古くから地域に深く根付き、愛され親しまれた葬儀社であり、継続して地域の人々にとって近い存在であり続ける気軽さも重要な要素であった。
1階は軒下空間を介して道路が入り込むように土間が連続し、事務所に面しちょっとした立ち話しができるようなエントランスホールから奥のお清めのスペースへと繋がっている。お清めのスペースは以前から地域のお祭りで休憩場所として使われていた役割も継承し、近所の集まりにも使えるよう、拡幅される区道と隣地側の庭に開いている。
2階はセレモニーホールと家族室。周囲の喧噪から閉ざされ、大きく空へと開いたハイサイドからたっぷりと光が注ぐ落ち着いたスペースになっている。
生命ある誰にでも訪れる別れの時は日々の生活の延長ではあるが、一つの区切りとして見送り、見送られたいと多く人が考えるだろう。
1Fは水平にまちへとつながり、階段を上がった2Fは緩やかに切り離され空へとつながっていく。このような空間が日常の中の儀式の場としてまちの人にまた改めて親しまれはじめている。
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