ファスナーの製造で世界のトップシェアを誇り、建材でも有数の企業の中核拠点である黒部事業所に残る最も古い工場(昭和33年竣工、紡績工場)を技術資料館として再生するプロジェクトです。残されたカマボコ型の屋根を戴く約12,000m2の建物の一部を切り出し、耐震補強を施し、史料保存と機械の展示室(非公開)と解説付きの展示室および多目的ラウンジとし、一部をテラスとしました。ごくありふれた工場を丸裸にしたとき、美しい構造があらわになりました。人口減少の縮小社会では建築施設は余ります。そこで、持て余した構造物から引き算することで新たな生命を吹き込み、建物の価値を高めることが重要になります。新築部分は懸垂曲線(逆アーチ)をもつ暑さわずか7㎝の入り口キャノピーのみですが、大理石の模様をプリントした風除けパネルに西日があたると床に大理石模様を描き出します。これはそのまま超モダンな住宅になるのでは・・・・。と思いました。また、この施設は、幼木から育てて郷土の森として再生するYKKセンターパークの休憩施設としても位置ています。
この計画は物的な「引き算」で価値の「足し算」をするというデザインのマジックに挑戦しました。改築に対する新しい方向性を示すことに成功した事例です。
構造設計:構造設計集団
設備設計:総合設備計画
施工:第一建設、黒部エムテック
撮影:北嶋俊治
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