「暮らしのものさし」では、ただ消費者として暮らしを営むのではなく、自分の暮らしをデザインする、“暮らしのつくり手”たちを紹介しています。※この特集は、SuMiKaとgreenz.jpが共につくっています。
10月12日(日)まで、日本初となる「小屋展示場」がオープン中です。それぞれにオリジナリティのある、14の小屋が勢ぞろい。しかもこの小屋のほとんど、実際に販売しているんです。
虎ノ門ヒルズも開業して、脚光を浴びている虎ノ門。グリーンズが日本仕事百貨と運営する「リトルトーキョー」がある街としてもおなじみですよね。
大都会のまん中、会場となったコインパーキングに続々と現れた小屋たち。道ゆくオフィスワーカーの皆さんも、思わず足を止める光景です。
企画と運営をしているのはSuMiKa。ディレクターの佐藤純一さんと一緒に会場を回りました。
どうして今、「小屋」なのか?
そもそも、なぜ小屋の展示会を思いついたんですか?
佐藤さん これは、自分らしい暮らしを考えるイベントなんです。自分らしい暮らし方って、なかなか考えられません。でも『あなただったらどういう小屋を建てたいですか?』『どんな風に暮らしたいですか?』という具合に考えると、とたんにいろんな制約が外れて発想が自由になります。
自分の暮らしを中心に考えて、そこから家や建物を考える人たちが来てくれているそう。
来場者は大きく2つの層に分かれると佐藤さん。まず、定年退職をきっかけにして自分の趣味を始めるような人。リフォームをして書斎をつくるより、趣味に没頭するための小屋を庭に建てよう、という層です。
もう1つの層は、地方に安い土地を確保して小屋を建てるという若い世代。平日は都会の賃貸で暮らしながら、休日には都会を離れる2拠点居住です。
海外の国々では、避暑地や都市部を離れて小屋を持つライフスタイルが根づいているので、日本でもスタンダードになるのかも。
家はどこまで自由になれるか?14棟のオリジナルの「小屋」
それでは、実際に「小屋」を紹介していきましょう。
住宅展示場に比べて、小道具やデザインで暮らしのストーリーが膨らみます。セルフビルドのキットで、シンプルな輸入品だと50万円台から。完成品を設置するタイプでは200万円台というケースが多いようです。
設置面積は3.3m四方ほど。このサイズ感、自分らしい暮らしを考えるこれからの基準にになるかもしれません。
おや、あちらの小屋に見覚えのある顔ぶれが。
グリーンズの鈴木菜央代表とYADOKARI小屋部のコラボレーションが、こちらの展示です。
「この小屋は、みんなでつくる暮らしの実験場にしていきたいです!」と熱く語る菜央さん。これからどんどん、新しいアイデアを取り入れていきます。
菜央さん 水道なし、トイレはコンポストトイレ、電気は自家発電。完全オフグリッドを体験できるオフィス兼DIYワークショップ兼バー兼お客さんの泊まる部屋にします。楽しみです!!
施工は「YADOKARI小屋部」。彼らの最大サイズかつ都内での初めての施工になったそう。部長の唐品知浩さん、この小屋の鑑賞ポイントは?
唐品さん 虎ノ門という立地から、自宅からランニングや自転車で来る人、仕事の合間に抜けてくる人など多くのメンバーや施主である鈴木菜央さん家族にも参加して貰い、かわいい小屋が完成しました。
唐品さん 建具や材料の一部は、各地で集めた古材や廃材を使い、新築でありながら何十年もそこに建っていたかのような味わいが出たかと思います。短い期間ではありますが、多くの方に見てもらえたらうれしいです。
実用性だけでなく「小屋」というキーワードから、現代の暮らしをさまざまに考えさせてくれる展示もあります。
取材当日はステージで、夏水組の坂田夏水(なつみ)さんが「1畳ハウス」のDIYワークショップを開催していました。
4組の参加者たちが、小屋にペンキを塗って、壁紙を貼って、小道具や車輪を取り付けて。坂田さん、やってみてどうでした?
坂田さん ワークショップはとてもレベルが高くて面白かったです。1畳ハウスは、実用性はないけれど、小屋について親しんでいただける良い機会になったと思います。犬小屋でもなんでも、面白ければいいんです!
自由でノビノビして、いい雰囲気。無理のないサイズ、無理のない資金、無理のないやり方でーー自分の手で選びとる、自分らしい暮らしを考えるきっかけが、ここにたくさんあります。
キッチンカーでは、美味しいご飯も販売。ふらっと気軽に、虎ノ門の会場へ足を運んでみてはどうでしょう?
(Text: 神吉 弘邦)