瀬戸内。7つの島と橋で繋がるとびしま海道に浮かぶ島、呉市下蒲刈島。人口1,400人弱程の小さな島ではあるが美術館や資料館、庭園などがあり文化と歴史がぎゅっと詰まった島でもある。なかでも、本土から1番目にあるこの島において、島と本土を繋ぐ安芸灘大橋を渡ると絶景の多島美を堪能することができる。
計画は、近年呉市が推奨しているワーケーション環境の整備におけるコワーキングスペースの整備業務です。計画場所は海駅梶ヶ浜ふるさと産品加工センター内の1画にある研修室である。この下蒲刈島の梶ヶ浜エリアは古民家風の宿泊施設でバーベキューも楽しめるコテージ梶ヶ浜を中心に、海水浴場、キャンプサイト、レンタサイクルやサップなどレジャーが楽しめるエリアでもあり海、山などワーケーションを体験するのに最高の場所である。
施設内の扉をあけると正面から目に入ってくるものは、向こういっぱいの海の広がりである。また一方で観松園の松も見渡すことができる。瀬戸内独特の穏やかな海において最大の魅力は水平線ではないかと思います。アイレベルと水平線の関係性を軸にまた、この豊かな自然環境を内部空間に取り入れ、対峙する為にひとつには仕上材にはプリント系製品などの工業製品の使用を控え、自然系素材を有効活用することを念頭に計画を実施しました。床は既存の塩ビシートを剥がし、モルタルコテ仕上の薄塗りとし、壁は既存のクロスを剥がし、腰壁にスギの羽目板、羽目板上部にはしっくい(柱には灰色と山吹色を調合したしっくい)、天井は既存のジブトーンの上からラワン合板を貼り、スギの化粧格子を取り付けました。
建具や家具にも自然系素材を採用し自然系着色塗料を塗布しています。
自然系素材を使用することにより、外部環境とのバランスの整合性をはかり、また時として外部からの光を程よく取り込み、優しく、柔らかな空間へと生まれ変わりました。
平面計画としては、海に並行して間口いっぱいのカウンター席を設け、水平線を堪能しながら執務にあたることができます。可動式でもある中央の大テーブルも自然系素材の繋がりで105x105角の柱材でフレームを組み、天板にはガラスを採用しています。天板にガラスを採用することで外部の景色を反射して内部へと景色を映し出してくれます。カウンター席や大テーブル、天井のスギ化粧格子など水平、垂直を協調することで水平線の見え方もより協調されていきます。大開口アルミサッシ部分の光の遮蔽としてバンブースクリーンを取り付けることにより外部環境の景色に趣を与えてくれます。
テーブルを可動式にすることにより、個人の執務作業の場として、また例えば、一企業のミーティングとしてテーブルをロの字やコの字へとレイアウト変更も可能、椅子をずらっと並べて最前列に大テーブルを並べてセミナーの利用など自由自在にレイアウト変更ができるようになっています。周りの人の視線が気にならない半個室やテレワーク用の個室も備えています。
外部には海を眺める、海へと伸びるデッキテラスを設置し、休憩の場、ヨガの場、企業のキックオフミーティングの場などの想定をしています。
ここでも材は自然系素材であるヒノキを採用しています。
海をメインとした自然環境【遊】、隣接する宿泊施設のコテージ梶ヶ浜を利用【泊】、そして【働】をメインにしたコワーキングスペース。3つが交わることで、将来、新規ビジネスの創出機会の場、地方創生への貢献の場、地域人材確保の場⇔地域活性化と結びつき、創造性を生み出す場としてのビジネスモデル化に繋がるよう願っています。