周辺環境は前面道路幅員4mで住宅に囲まれたいわゆる開発住宅地の角地に建つ個人住宅。施主も主にビルの設計を手掛ける一級建築士。
以前より同じ場所にお住まいだった木造住宅を建て替えるにあたり、豊かな明るい住空間とご家族の意見をまとめてほしい。そして、RC造でつ
くりたいとの要望であった。
施主より設計の相談があり初めて敷地を訪れたのは35度を超える9月の夏の暑い日だった。設計の手掛かりを得るために佇んでいると、偶然、近所の幼稚園児が日課としている散歩に出会うことが出来たが、眺めていると歩道も無く見通しの悪い前面道路を車に注意しながら道を大廻りに進んでいく光景が目に入った。ごく自然にこの子達の安全性から角地に部分に、外壁と目隠しを
兼ねた死角の出来ないカーブ(弧)を描いた壁による建築の姿が浮かんだ。内部の構成から建築の形状が決まるのでは無く、外部のそれらの要因で
この場所に建つ建築の形が決まることで、住宅が小さな公共性・地域性をつくれるものと考えた。
弧を描く壁が決まった後、道路境界線に沿って塀が無いことがごく自然であったため、同時に近隣からの視線を制御しながら目隠しのカーテン類
の必要の無い開放的な暮らしが実現出来ないか、と考えた。また、熊本は西日の特に強い地域である。真南の日射であれば庇の出で制御は出来るが、高度の低い西日の強い日差しは壁面で制御をする必要がある。弧を描く壁の膨らみによって、南から西にかけて室内空間との距離が狭まっていくことは理にかなう。また、強い日差しを直接室内に取込むので無く近隣の視線を遮り、外気負荷を抑えるために南西側に階段や坪庭、テラスなどのバッファ-ゾ-ンを設け、その空間で日光を一旦受けて、そこで拡散されたやさしい光がリビングや
個室に入っていくように意図した。
偶然、道路を散歩する子供達によって発見した弧を描く壁がこの住宅を豊かなものとしている。
●この場所に建つ建築としての在り方。歩行者の安全性・視認性の確保。住宅の公共性と街並みへの寄与。
●住宅が密集した住宅街に建つ住宅の解。近隣からの視線に配慮した設計による開放的な暮らしの実現。
●熊本特有の西日の強い直射日光を、空間構成によって間接光として導入しやさしい光に溢れた室内空間を実現
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