北国のオフィスの計画。
まちの構成そのままに、建物は間口が狭く、奥に細長い形をしていた。
当初からかなり予算の厳しい計画で、空間すべての改修は困難を極めたが、
寒冷地で断熱は欠かせないため、必然的に改修範囲を限定することになった。
そこでこの「間口が狭くて奥に細長い」建物形状を利用して、
まちを引き込む通り土間の構成でオフィスを計画することにした。
通り土間の持つ半外部と内部の対比を、躯体と仕上げ・仕事場とフリースペース・断熱空間と非断熱空間に変換し、機能的要望に応えようとしている。
この構成は、まちの人がふらっと入ってこられるようなオフィスとして、まちに根差した活動をしたいというクライアントの思いにも合致するものになった。
既存の躯体・空間の持つ力に敬意を持ちつつ、ささやかな操作でクライアントのために設えた居場所をつくり出すことを目指した計画で、坪15万というローコストで、ミニマムな費用・マテリアルでマキシマムな効果を創出する、まるで家具のように身近でささやかで手に近い感覚でデザインされた建築である。