この計画は、長野駅周辺で行われている区画整理事業のエリアのエッジ部分にある。クライ アントはこの近くに住宅があったが、区画整理による換地を早い段階で認めたそうだが、与 えられた土地は、住宅として成立するのか首を傾げたくなる場所である。
東京では、もはや一般的になりつつある狭小住宅レベルの敷地面積だが、長野の地域性を考 えると、まだまだ一般的ではない。さらに、周辺には巨大な建築がいくつもあり、とても住 宅のスケールではない。しかも、開発途中であるから、どんどん変化していくのが目に見え ている。そんな周辺環境とどのように折り合いをつけていくかということをデザインの主題 として設計している。
建築的には、倉庫を除いてフロアを3層用意して、ワンフロアーワンルームとして積層して いる。現在の家族は少ないが、将来的な事もあり、二世帯住宅として計画しており、1階を 親世帯、3階を息子世帯2階を共用のキッチンとしている。
予算的にはフットプリントを大きくして階を少なくした方が圧倒的に有利だが、ここでは その手法をとらず、あえて建物高さが大きくなるような積層のさせ方を取っている。それは、この環境に対応するためでもあり、クライアントのここに住むという意思表示に他 ならない。さらに、中間に空中庭園(といってもさほど広くはない)のような孔を穿った。
これをメインエントランスと共用することで2世帯住宅で問題になる入り方に、配慮してい る。プラン的には非常にシンプルな物であるが、穿つ孔を強調するために壁面はフラットな 鉄板を張り付けている。そして、その鉄板のモジュールによって、分割された枚数が 51枚 ガラス=15枚となり、名前の由来となっている。
周辺の建築群を見ていると、それぞれが独立した尖塔のように建っている。それは、ある意 味敷地に余裕があるからかもしれないが、東京のように隣接している感じがあまりしない。
この住宅も、その一員に参加するべく建ち方を共有している。さらに年月が経れば、周辺環 境は激変するであろうが、周囲に埋没せずに、凛と建っていられることを願っている。
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