最初にこの住宅を訪れたときは分断された居室が狭い廊下で繋がれ、水回りはその機能を十分満たす事が 出来ないでいた。建築自体の面積は十分であるのに有効な部分が少ない。
しかも大事なリビングには光が届かず、昼でも照明が必要なほど薄暗い状態であった。
当時はご夫婦の母親が一人で住んでいたのだが、それでもなんとか機能している状態。
そこにご夫婦が同居する事になり、このプロジェクトは発生した。
改修にあたって、リビングを広くする事は容易に想像できるが、構造的にどう解決するかが問題であった。
さらに和室との関係を無視する事も出来ない。フロア全体に手をつけるコスト的な余裕はなかったので
既存部分と緩やかにフィットさせる工夫も必要であった。
最終的に採用した案は、外部にはほとんど手を加えず1階のリビングのインテリアに重点を置くプランだった。
リビングの一体空間の確保と同時にリビングとの境界に和室側はフロストガラス、廊下側は開口部を伴う透明ガラスで『Glass_wall』と『Light_tube』を設ける案がこれである。
このプロジェクトにとって、この二つの要素はとても重要であった。
『Glass_wall』は単なるガラスの壁であるが、居室の境にありながら外部の窓に対して少し距離をもっているから外部の色々な光を取り込んで透過できる位置にある。
リビング側からは和室や廊下の光を、和室側にはリビング越しから差し込む光をやわらかく導いてくれる。
光の通り道を『Light_tube』として意識する事で、玄関の吹き抜けの光さえもリビングに持ち込もうとしている。
構造では10本以上の(構造的に重要ではない)柱を抜く事になり、さらに基準的に過去の水準でしか耐震性能が
ないため補強は必須であった。まず『Glass_wall』と『Light_tube』に関わる構造柱は鉄骨柱に入れ替える事で 存在感を弱めている。空間確保のためにスパンが飛んでしまう梁には軽量鉄骨による補強をしたり新たに梁を 新設する事で強度を確保している。さらに1階のほとんどを構造用合板を内側から貼ることで耐震補強を施した。
竣工直後に軽度の地震にあってしまったが、何の問題もなかったので補強は機能しているようだ。
今では『Light_tube』に風が舞い込んで、新たな『Wind_tube』を生み出している。
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