世田谷の閑静な住宅街にある北東角地に建つ住宅です。ご主人はもともと建築がお好きで、建築作品集をよく読まれている方でした。ご相談に来られた時には、すでにこの三角形の土地を購入された後でしたが、具体的なかたちは分からずとも、この土地を生かした住宅が実現できるはずだと、確信に近いような想いを持たれていたように感じます。
個性の強い敷地形状を最大限活かし、最大ボリュームを確保するため、プランも三角形で計画しました。斜めの壁で構成された内部空間は遠近感が強調され、また、階段を中心にらせん状につながるような動線計画と相成って、方向感覚を失うような不思議な効果を生みます。限られた面積の中で、迷路性あるいは回遊性とでも言うべきこの家の特徴は、感覚的広がりを生む重要な要素となっています。
ちょうど三角形の鋭角頂点にあたる北(書斎)と南(リビング暖炉)には、大きな窓による抜けをつくる事で南北方向への広がりを生んでいます。リビング南の角には窓下に大谷石の暖炉を設け、吹抜け越しに自然光を取り込むと共に外部のシンボルツリー(写真撮影は植樹前)と火による安らぎを家族に与えてくれる場所としました。
また、西に向かって上っている周囲の地形にあわせるように、1,2階の床はらせん状に連続するようなスキップフロアで構成されています。最も低い書斎から最も高い子供室にいたるまで、地形に合わせた床レベルの組み合わせにより、全体が必要以上のボリュームになることを抑えています。この事で心地よいスケール感を生み、周囲の地形に寄り添うような緩やかな勾配を持つ屋根が、閑静な街並みにあって静かな存在感を醸し出します。
4mほどの道路を挟んで三方とも建物に囲われているため、天窓やインナーデッキを利用して、プライバシーに配慮しながら採光通風を計画しました。結果的に生活感を表に出さない物静かな表情の建物でありながら、明るく抑揚の効いた空間を内包する建築となりました。
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