大らかな土間を持つ、ほぼ平屋のような佇まいの農家住宅。敷地の周囲は建主一家の田畑が点在する。軒が深く控えめな佇まいとLDK・土間・庭・畑が地続きに連続するような家を求められた。
建主のお人柄、要望書の節々に現れる住まいのイメージ、敷地が持つ雰囲気も相まって、今回は繊細なディティールを追求するよりも、むしろ、大らかでざっくりとした居心地の良さを目指すべきと考えた。しかし、それはただあっけらかんと空間を作っていくだけでは成立せず、内にいながら心が開かれていくような光の取り入れ方、空間のボリューム感、外構計画が必要となる。空間そのものは大らかでも、その大らかさを住まい手が容易に受け入れられるような配慮には繊細さが欠かせない。
LDKの天井高さは2200mmと低めに抑えることで、水平方向の広がり、節有の杉材の柔らかな質感、土間・庭への連続感に意識が働くようにした。また、土間からの反射光を柔らかく受け止める背景として、壁・天井は糊土の自然な白色(白過ぎない白)で仕上げた。
冬場の土間に射す暖かな陽光、夏場の深い軒に守られた静けさなど、この家の持つ普遍的な価値が、住まい手の暮らしに豊かさと奥行を与えてくれることを期待している。
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