建築家と家づくり 好きに暮らそう SuMiKa
2014年 6月 9日

Gallery ef


有名でなくても、心に残る、大切にしたい建物がある。地域にずっと残していきたい名建築を記録していくローカル建築探訪。「名建築ノート」(『コロカル』で連載中)より。


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コミュニケーションの場となる貴重な建築

東京は浅草にあるGallery ef。
正面から一見するとふつうのカフェなのだが、その奥に併設されているギャラリーは、
江戸末期に建てられた土蔵を再生させた建物。
かつては特殊金属を扱う会社の倉庫だったが、
現在のオーナーのIzumiさんの祖父が亡くなるまで、
数十年間、人が入ることもなく、ひっそりと佇んでいたそうだ。
調べてみると、梁の墨書きから、慶応4(1868)年に建てられたことがわかった。
相続税や会社の整理のため、蔵は壊して土地を売るしかないと考えていたところ、
たまたま出会った漆造形作家の鍋島次雄さんの呼びかけで多くの人たちが集まり、
蔵を再生させることになった。
それが1996年のこと。
それから約1年がかりで現在の姿に生まれ変わった。

「どうにも手が付けられないようなボロボロの状態から、
鍋島さんはこの完成の状態を思い描けていて、
仲間たちを呼んで作業するからぜひやらせてほしいと言われたんです。
そこからはいろいろなアーティストや職人たちが集まってきて。
漆の作家たちは左官屋さんの技を目の前で見られる機会を喜んだし、
左官屋さんは作家たちが漆を塗る作業に興味津々でした」

関東大震災と東京大空襲に耐えて残っている建物は、東京ではとても貴重。
空襲のあとも、もしすぐに蔵の扉を開けてしまっていたら、
バックドラフト現象を起こして爆発していたはずだが、
当時それを知っていたIzumiさんの曾祖母は2ヶ月ほど待ってから開けたそうだ。

「空襲だけじゃなく、戦後の再開発でなくなってしまった建物も多いけど、
それも生き延びた。建物自体に生きる意志があって、
所有者とは名ばかりでこちらが所有されている感じがします」

この建物は登録有形文化財にはなっているが、
重要文化財と比べると国や自治体の援助はないに等しく、
修復にかかる費用も自己負担になってしまう。
古い建物を残していく大変さを痛感しているが、ギャラリーでイベントを開催したり、
震災直後には近所の人が話をするためにカフェに集まってくるなど、
Izumiさんはこの建物が「場」として育ってきたことも実感している。

「屋久島で生まれ育った、木と話ができるという人がここに来たときに、
ここの木はすごく喜んでるよ、と言ってくれたんです。
まるで建物に人格があるみたい。
古くて歴史的に重要な建物はたくさんあるけど、
人とコミュニケーションできる建物ってなかなかないですよね。
だから自分たちだけのものとは思っていなくて、
いかにみんなと使っていくかを考えています。
ただ使うだけだと使い捨てになってしまうし、
建物を残すだけじゃなくて、どういう“場”ができていくかが重要。
ここでそんな“場”が育ってきたのは、建物の魅力が大きいと思います」

毎年12月は音楽会月間として「月夜の森」と題し、
さまざまなアーティストによる生演奏ライブを開催する。
タイトルは、静かな森の湖に月が映っているというイメージで
床を美しい漆黒に仕上げた、鍋島さんの最初のデザインコンセプトからとった。
この冬も「月夜の森」にはたくさんの人が集ったようだ。

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梁に「慶應四戊辰年」の墨書きの文字が見える。

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床の下は能舞台のように空洞になっているので、音の響きは格別なものがある。


writer’s profile

Ichico Enomoto
榎本市子
えのもと・いちこ●エディター/ライター。生まれも育ちも東京郊外。得意分野は映画、美術などカルチャー全般。でもいちばん熱くなるのはサッカー観戦。


credit

撮影:田子芙蓉


information

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Gallery ef(ギャラリー・エフ)
住所 東京都台東区雷門2-19-18 【map】
TEL 03-3841-0442
営業時間
ギャラリー 12:00 ~ 19:00(展覧会開催中は ~20:00)
カフェ 11:00 ~ 19:00
バー 18:00 ~ 24:00(祝祭日は ~22:00、金曜・祝前日は ~26:00)
火曜休


※この記事はcolocalに2012年1月13日に掲載されたものを転載しています。

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