雪国のすまいの未来形
雪国においては、降雪などの影響による日照時間の短さは、冬の寒さと同様切実な問題である。雪に閉ざされる冬の間、自然光をいかに享受するかは人々の健康的な暮らしと直結している。そこで、断熱性の高い透過性素材を用いた「採光断熱壁」を考案し、2階外壁の全面に採用した。このシステムは、木造在来工法と厚さ40mmの断熱性の高い中空ポリカーボネイト複層板、太鼓貼りの透湿防水紙、空気層などにより構成され、構造的な工夫をすることで壁全体を採光面としている。屋根は冬季の除雪を軽減するため、雪降ろしの不要な無落雪屋根とした。室内は雪あかりのようなやわらかい自然光に満ち、四季のうつろいを感じることができる。地方でも入手可能な汎用性の高い材料を組合せることでローコストながら快適な居住環境を実現している。
風景を取込むランドスケープとしての建築
敷地周辺は緩やかな南面傾斜地で、水田が棚田状に広がっている。建物は高さを抑え、南側に大きく開口を設けている。間口三間の木製建具は全て開け放つことが可能で、風景を住まいに取込む額縁として機能すると共に、内外を一体的に使える縁側空間を提供する。縁側の庇は、夏至と冬至の太陽高度を考慮して設定している。大きな開口は冬季の晴天時に日射取得の面で有効だが、そうでない場合は熱損失を最小限に抑える必要がある。今回、施主の理解もあって、地域の気候を熟知した経験豊富な地元の施工者と協働することで、雪国で木製建具による大開口に挑戦することができた。建具は環境性と経済性、施工性を鑑み、ペアガラスとし、木の反りを軽減するために建具高さを2mに抑えたほか、召し合せには気密性に優れた金物を採用している。天井高さを絞ったことで視線が外部へと自然に向かうようになり、暖房効率の面でも有効となった。さらに、コールドドラフト対策として、重ね着の発想で空気層を持つ断熱ブラインドを併用している。
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