この建物は、共働きのため夫婦と子供のための住宅として計画された。
要望は、大きなリビングと各部屋が独立しすぎないこと。
これからの長い年月を過ごす上での「共働きの大人と子供の住まい方と距離感」、「大きな居場所と小さな居場所を距離感」を考えることだと感じた。
建物は2階建てで、1階の四角のヴォリュームの上に、5.4m、4.3m、3.4m、3.3mの4つの三角形のヴォリュームがそれぞれセットバックしながら、重なり合い乗っかっている。
1階にリビング、2階に各居室の構成だ。
1階は、天井高さ2.5mでリビングを設けている。同じ天井高さで、リビングに寄り添うように和室を設け、その先の小道とプライベートなリビングを緩く繋ぐ役割を持たせた。
2階は、主寝室、書斎、子供部屋だ。三角形のヴォリュームがそれぞれの部屋になっている。本件で、一番象徴的な役割を持っているのが、書斎だ。
L型の書斎は、開放的で家族の繋がりを生む場所となり、床が60×120角の小梁を120ピッチで並べた格子床になっている。下階と繋がりを持ち、音、声や空気を共有する。
子供部屋と書斎に面しており、使用用途により書斎まで拡張することが可能だ。子供は、部屋の大きさに縛られた使い方、成長の仕方をするわけではない。時には、部屋から飛び出し書斎まで、画材を広げ絵を描くこともあるだろう。
また、東と南に2面大きな開口を設ることで、日中十分な日光を取り入れることができることで、空調を使わずとも建物全体の空気が暖められる。真冬の夜でも、リビングの空調1台で家中十分な程暖かい。
1階と2階が役割によって断絶している構成かのように思うが、書斎によって環境的にも建物の一体感を獲得した。
また、書斎の格子床と無骨な構造材が建物全体の構築インテリアにもなりうると考え、真壁納まりを採用した。
車の出入りを考慮し、2面の道路に寄る配置とした。街からは少し圧迫感のある配置かもしれないが、2階のヴォリュームをそれぞれセットバックすることで、立体的な抜けを獲得した。
また、セットバックした部分をルーフテラスとして利用することで、屋上の都市利用の可能性も検証した。屋上利用やバルコニーの活用は、都会的な利用方法ではあるが、まだまだ検証されるべき価値だと考える。
現代人は、オンライン上で関係性を作り出すことが多い。現実の環境がいかに人々の繋がりを生み出しているか、我々は社会に問い直す必要がある。
限られた時間で家族が、繋がる場を生み出せるのは、建物である。
建物は、時代、社会、歴史や自然等さまざまなものとの距離感のバランスを取りながら、まるでコミュニケーションをとっているかのように時を刻んでいる。
現代社会は、さまざまな問題を抱えている。皆、それぞれの不安を抱えながら生きている。
建物と社会のあり方が、その住まい手と社会の関係を示し、問題解決の一手を担うことができると考えている。
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