建坪は約11坪。ワンフロアまるごとのLDK、書斎と子ども室を確保し、1階には将来の店舗空間まで生み出した充実のプラン。
text_ Yasuko Murata photograph_ Takuya Furusue
GEHの家
(東京都小平市)
- 設計
- I.R.A./加瀬谷章紀+綱川大介
- 住人データ
- 玲之(れいし)さん(37歳)会社員、証子さん(37歳)フリーランス、長女(5歳)
ご夫婦ともに小平市出身。地元を離れることには抵抗があり、エリアを限定して土地を探し、理想的な立地に戸建てを新築。
家を取得するにあたり、予算的に新築一戸建ては難しいと考えていた土方玲之さん、証子さんご夫妻。5歳の花々(ここ)ちゃんと3人で住む家に、広さは必要ないという思いもあったという。玲之さんは言う。
娘はいずれ独立するから、十数年後は2人だけになります。狭小の土地でいいから、好きなように家をつくれないかと模索していました
知人で建築家のI.R.A.綱川大介さんに相談しながら土地を探していたところ、たまたま予算にあった場所が見つかり、一戸建てを新築することに決めた。大通り沿いに位置するその土地は、建坪が約11坪。南側と東側には、3階建ての背の高い建物が迫っている。北側も隣地の斜線によって大きく切り取られるという条件だ。
北側斜線で切り取られる傾斜をそのまま屋根として立ち上げ、南側に最大限の高さを確保しました
と話すのは綱川さん。家に人を招くことが好きなご夫妻の暮らし方から、限られた面積の中で、いかに広く快適なLDKを生み出すかを考えたという。
1階に寝室や水まわりなどをコンパクトに収め、2階をまるごとLDKとしています。2階をできるだけ大らかな空間とするため、ボックスビームと呼ばれる構造体の木の箱を浮かせました。これにより、2階のLDKは柱のない広々とした空間となっています(綱川さん)
ボックスビームの中には子ども室と書斎が収められ、ロフトとしても機能。天井を片流れの屋根と同じ勾配とすることで、LDKにダブルルーフをつくりだしている。ダブルルーフには採光窓を設え、上部からLDKまで光が届くようにしている。
また、ボックスビームには仕上げをせず、構造材のラーチ合板をそのまま現しとした。コストを調整するとともに、ご夫妻が好きなヴィンテージ家具などのテイストにも似合う、ラフな空間となっている。
証子さんは将来的に、この家の一角で雑貨などを販売するショップを開くことを考えているという。
1階の大通りに面した個室は、店舗にすることを前提に入口となる掃き出し窓を設け、床を土間にしてもらいました(証子さん)
狭小地で個室も書斎も確保し、店舗空間も生み出す。構造まで含めた設計の工夫が、小さなこの家の可能性をぐんと広げている。
専門家プロフィール
1974年 北海道生まれ。99年 東京理科大学理工学部建築学科卒業。2001年 東京理科大学大学院修士課程修了。01~09年 株式会社プライム建築都市研究所。10年 I.R.A. 設立。現在、日本工学院八王子専門学校非常勤講師。
1977年 東京都生まれ。2001~03年 日活撮影所。02年 明海大学経済学部経済学科卒業。06年 工学院大学専門学校建築学科卒業。06~09年 有限会社ラスティック建築研究所。10年 I.R.A. 設立。現在、日本工学院専門学校非常勤講師。
I.R.A.
- 住所
- 東京都新宿区大久保2・9・13・3FB
- TEL/FAX
- 03・3202・9799
- info@iraap.jp
- URL
- www.iraap.jp
〈物件名〉GEHの家〈所在地〉東京都小平市〈居住者構成〉夫婦+子供1人〈用途地域〉第二種中高層住居専用地域〈建物規模〉地上2階建て〈主要構造〉木造〈敷地面積〉79.56㎡〈建築面積〉37.26㎡〈床面積〉1階 37.26㎡、2階 37.26㎡、ロフト 8.63㎡、合計 93.15㎡〈建蔽率〉46.83%(許容60%)〈容積率〉93.66%(許容200%)〈設計〉I.R.A./加瀬谷章紀+綱川大介〈施工〉ホームビルダー〈構造監修〉萩生田秀之〈設計期間〉8ヶ月〈工事期間〉5.5ヶ月〈竣工〉2013年〈総工費〉1,799万円
※この記事はLiVES Vol.81に掲載されたものを転載しています。
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