この民家は江戸末期に建設され、数度の増改築をくり返し、その用途を変えながら(蔵→医院→住宅)140年間生き続けきた。
しかし、ここ数年は住まい手をなくし見捨てられた存在となり、朽ち果てる寸前の状態であった。そんな中で、隣接した今回の施主住宅が、道路拡巾のため、移転の必要に迫られ、この民家の再利用が計画されることとなった。
「もったいない」がこの再生のキーワードである。増改築をくり返していることも関係があると思えるが、民家そのものに対するノスタルジックな感情というよりも、個々の素材、部材への愛着が施主の思いであった。その意味で、この民家を構成する各年代の部材達を最大限利用し、かつ、同時に解体する隣家の部材も転用できるものは積極的に利用することで、まったく新しい空間へと再構成することを試みた。
結果、外観は再生前の形態を残しながらも、内部構成はどの時代のものともまったく違う新しい空間構成となった。
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