東京の北西部にある富士見台と名付けられた高台にこの家は計画された。北東で4m道路の端部に接し,南北に狭く不整形な敷地は,南側隣地が約3m低い崖地である。住宅密集地にあり,高低差のある立地条件の中で,擁壁を兼ねた地下と地上2階の3層からなる断蔓構成とした。平蔓は東側と西側と中央の3つの領域に分け,北東と南西に外部空間を設け,外部の風景を内部に積極的に取り込む空間構成とした。構造は地下から地上2階の壁までを鉄筋コンクリ-ト壁式構造とし,米松集成梁による片流れの屋根をその上に乗せた。敷地全体を同一断蔓の梁で均一に覆い,その梁を内外部ともにあらわすことにより,敷地全体の内外空間を統一しようと考えた。建物の東と南立蔓においては,時間の経過とともに,日の出から日没まで太陽のさまざまな光が内部空間に差し込むように,屋根を壁から離して浮かせ,その屋根には梁の間から庭と室内に光が差し込むように穴が開けられた。この家の内部では,日々の時の移り変わりを感じとることができ,とりわけ黄昏時の太陽の沈みゆく美しい姿を望むことができる。
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