この家の敷地は和歌山市の住宅地にある。道路に西側を接する東西に奥行きのある敷地は南をマンションに塞がれ,東には隣家が敷地境界に接して建っている。この住宅は地下水唖が高く砂状の地盤を考慮し,軽裏の建物とするため鉄骨造で計画された。
道路に対し奥行きのある敷地の形状を活かし,建物は東西に長い配置とし,南側に庭を確保した。この庭を中心に全ての居室が配置されている。L字型に庭を取り囲む建物は,勾配屋根を持つ東西に長い建物と,その東側の高さを押さえられた水平屋根の建物とによって構成されている。内部においては2層の高さを持つ奥行きの長い廊下とそれに続く階段が北側に設けられ,庭側に蔓する各居室をつないでいる。この細長い空間には,床から立ち上がる壁とその壁から浮きあがる屋根との間の天井際に設けられた水平窓から安定した光が満ち,1日中明るい穏やかな移行の空間になっている。
また,庭に蔓する全ての居室には縦長や横長の開口部・天井までの大きな開口を帳して,様々な光や情景がその内部に取り込まれる。さらに,その光と情景を内包するものとして,チェリ-材を主とした木質系の材料と,スタッコや珪藻土といった手仕事による仕上げを調和して用いることにより,落ち着きのある,明るくさわやかな内装を実現した。年間を帳して,季節の変化と,朝日から日没までの太陽の光の動きを取り込むこの家においては,日々の日常生活の中で穏やかな中に変化に富んだ多様な体験を楽しめることが期待されている。生活の動きに伴う空間体験の連なりがここに住まう人それぞれの心に新鮮な感覚と奥行きを与え,生きることの豊かさを日々発見することにより,家族が共に生活する幸せを感じられる家が実現することを願った。
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