なだらかな南斜面の丘を切り開き、石積みで土留めされた分譲地に建つ四人家族の家である。敷地の周囲は家が建ち並んでいるが、南東方向に下った位置には公園があり遠方まで見通せる。街並みへの配慮から、当初より平屋建てで設計を進めた。ボリュームを抑えられるよう全体を2つの棟に分け、居間棟は公園に向かって開き、寝室棟は南に接する隣家を隠すように角度をつけて書斎でつなぐ配置とした。囲われるようにできた大小二つの庭は、室内を移動する度に違った表情を見せ、植えられた樹木が四季の変化を感じさせてくれる。
居間棟は太陽熱を集めて暖房として利用するために、南に傾斜した片流れの屋根を架け、上部の空間を活かしてリビングとつながる小屋裏部屋を設けた。道路から見上げるような高さにある寝室棟は、居間棟と同じ形で間口と階高をスケールダウンさせ、建物全体を低く抑えている。さらに2つの棟を斜めに配置することで、南東に開けた遠景を楽しむ事ができる。庭へ新しく植えられた樹々とダークグレーの外壁は年月と共に石積みになじみ、路行く人に潤いを与えてくれる。
環境への配慮からこの家では化石燃料を出来るだけ使わない暖房方式を取入れている。昼間は太陽熱により屋根面で暖められた空気が床下に送り込まれ、家全体に行き渡る。床下のコンクリートは熱を蓄え、昼間だけの暖房だが家中どこへ行っても寒くない家を実現させている。また太陽熱を得られない時の暖房として、再生可能なエネルギーである薪を燃料として使う薪ストーブも設置した。
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