リノベーションを前提に住宅を購入された、共に医者であるご夫婦二人の住宅。リノベーションの設計は今永環境計画の今永和利氏。
RC2階建ての1階部分は元々、キッチン+ダイニング+リビング+和室の4つのエリアに分けられていたが、これを約40畳のワンルームへと変貌させ、そのすべての壁を家具で覆うデザインとした。
通常このような空間で家具のデザインをする場合、扉の大きさや素材を揃えることにより、家具自体の存在をできるだけ消すことに注力し、均質な空間となるのだが、ここではまったく違うアプローチをとることになる。
まずモジュールの概念を棄て、すべては中に入るモノにより扉の大きさを決めてゆく。また、建築の壁面に沿うように配置せず、その奥行きのズレにより内容物を考慮している。そして、それらを積み木を積み上げるように組み上げる。一見まったくのランダムで製作や施工が大変なように感じるが、一つ一つに箱は直方体とし、ナンバリングするなど、製作・施工面でも配慮されている。そしてその『直方体』が積み木と感じる所以であり、今回のタイトル『白いおもちゃ箱』へとつながっていく。
それらの『積み木』は9つの素材の『白』を使い、規則性や意味性を感じないように慎重に配置されている。
床はバイブレーション仕上げのステンレスがななめに貼られ、家具の面と交わらない。よって空間全体が軸線を失い、そこに存在する人の位置感覚を曖昧にし、元来の目的である「生活行為の境界が曖昧で、多目的な一室空間」をより強調することに成功している。
ステンレスの床、ガラス質の扉、白いメラミン、4200Kの蛍光灯の光と、およそ「冷たい」素材に囲まれた空間なのだが、なぜかやさしい空気に包まれている。
家具や光のシルエットがぼんやりと写り込み、湖面を思わせるステンレスの床。タペミラー、マジックミラー、カラーガラス、ツヤ有りのメラミンツヤ無しのメラミン、ツヤ消しのルーバー、サランネット・・・など、数種類の反射率の中に見え隠れする虚像と実像の曖昧な境界線。扉の大きさと素材により、空間全体を包み込むリズム感。ななめの壁と床材の貼り方により明確な軸線を持たない空間構成、(外の様子は見えないけれども)刻々と変わっていく自然光と人工光の配合。。。。それらが相互に感覚を穏やかに刺激してくれる。心地よい感覚を再認識させてくれる空間。
またこの空間をより機能的にしているのが梁に取り付けられた照明である。河内一泰氏デザインの照明器具は、光と陰により空間を分節することができ、この空間をより機能的に仕上げている。
第8回「あたたかな住空間デザイン」コンペ住宅デザイン部門(2006 東京ガス特別賞)
2005年度グッドデザイン賞(2005 建築・環境デザイン部門
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