敷地は、南側と西側が駅拡幅に伴う工事の只中にあり、北側においても、設計中に戸建から5階建の賃貸マンションに変わるなど、急速にその環境が変化して行く状況にあった。
オーナーの住宅と賃貸住宅2戸というプログラムから、分棟による計画も視野に入れたが、周辺の開発規模に遜色のない出来るだけ大きな佇まいになるよう計画した。具体的には、賃貸ではクロスメゾネットを採用し、外部に屋外階段のような戸建らしからぬ要素が現れないよう配慮し、また、3世帯を一様に覆う大屋根を架けることで、小さな共同住宅としてではなく、大きな一軒家のように扱う工夫をしている。加えて、通常は消極的な隙間となることが多い北側に、幅2mの賃貸住宅のアプローチを設けることで、道路を含めてではあるが、建物全周に空地を確保し、建物の視覚的な独立性を高めている。こうして、大きな一軒家のようでありながら、周囲の空地を含めた環境の作り方としては、共同住宅のそれのような、独特なスケール感を与えることが出来たと考えている。
外壁は、角波サイディングを採用し、そのコルゲート形状を反復しつつ、ところどころ内外の光を透過するルーバーに切り替えている。これらサイディングやルーバーは、大屋根から張り出す深い軒が、建物に落とす陰影に合わせて黒一色に統一されている。
これらの効果によって、建物に差し込む陽射しやそれによる陰影、あるいは室内からの灯りといったその時々の状況自体が、建物の表情となることを期待している。
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