木の天板とブロックを積み上げたキッチン。アメリカから個人輸入したスイッチプレート。賃貸でとことん遊ぶ、思い通りの空間づくり。
text_ Yasuko Murata photograph_ Osamu Kurihara
仕立てる賃貸 Atype
(東京都世田谷区)
- 設計
- エトラデザイン
- 住人データ
- 御園さん(30歳) デザイナー
素材、家具、収納、パーツなどにこだわり、賃貸カスタマイズを実現した御園さん。最近は釣りやキャンプにはまっており、郊外まで出かけることが多い。
リノベ済みやデザイナーズなど、デザインされた賃貸を探していましたが、床は無垢材でもキッチンや洗面は既製品で、物足りない物件ばかり。設計段階から関わることができる、この物件の仕組みには、大きな魅力を感じました
そう話すのは、40㎡強のワンルームにリノベーションされた「仕立てる賃貸」に住む御園裕之さん。
「仕立てる賃貸」は工事前のスケルトンの段階で入居者を募集し、借り主の希望を取り入れながら、設計を進める新しい賃貸住宅。元は集合住宅のオーナー住戸だった150㎡ほどの物件を競争力のある賃貸にしたいという依頼を受け、エトラデザインの川上堅次さんが発案。40〜65㎡の3部屋に切り分け、NENGOとともに企画を進めた。
借り主は、川上さんが設計した複数の基本プランから、ベースとなるプランを選び、間取りのアレンジ、設備や仕上げの変更をオーダーし、カスタマイズする。設定されている予算の範囲で収まれば、借り主に負担金は発生しない。予算オーバーの場合は、実費を負担してグレードアップすることもできるし、他の部分とトレードオフもできる。
御園さんはSOHOとしてスタジオのように広く使えるプランを選び、システムキッチンから造作に変更。壁に棚を設け、タイルを張る代わりに浴室の床のタイルを省略し、モルタルのままにして予算を調整した。スイッチ、コンセント、照明などは、アメリカのサイトで好みのものを購入し、施主支給した。
希望のほとんどを聞き入れてもらい、予想以上に思い通りの部屋にすることができました
と話す御園さんは、ベースはシンプルにつくり、入居後もDIYでカスタマイズを続けることを希望。実際、壁の一面を黒板塗料で塗装し、土間には自転車を吊り下げるワイヤーを取り付けるなどして、手を加えている。鉄とナラ材で自作した大きなテーブルを、仕事や食事などオールマイティに使い、棚にはコンテナを組み合わせて衣類を収納。賃貸という枠にとらわれない、自分らしい住まいづくりを謳歌している。
私も長く賃貸に住んで不憫を感じてきたので、賃貸を楽しい空間にしたいという思いが昔からありました。賃貸の住まい方を広げる一つの提案として、今後も『仕立てる賃貸』を展開していく予定です(川上さん)
専門家プロフィール
兵庫県生まれ。1997年 IED イタリア・ローマ校留学。99年 日本大学理工学部建築学科卒業。2000年~ リビングプロダクト、アーキテクチャー・ラボ勤務。08年 エトラデザイン・エトラ株式会社設立。
エトラデザイン
- 住所
- 東京都中央区銀座3-11-17 銀座パトリアタワー801
- TEL
- 050・3555・1808
- info@etladesign.jp
- URL
- www.etladesign.jp
〈物件名〉仕立てる賃貸 Atype〈所在地〉東京都世田谷区〈居住者構成〉大人1人〈建物規模〉地上4 階建て(3 階部分)〈主要構造〉鉄筋コンクリート造〈建物竣工年〉1997 年〈専有面積〉40.72 ㎡〈バルコニー面積〉11.12㎡〈設計〉エトラデザイン〈施工〉中町工務店〈企画・プロデュース〉NENGO〈設計期間〉3 ヶ月〈工事期間〉3 ヶ月〈竣工〉2013 年
※この記事はLiVES Vol.78に掲載されたものを転載しています。
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