ここには叉首構造の茅葺民家が建っていました。しかしながら茅葺の維持管理の困難さから、既存民家を取り壊し建て替えることとなりました。
新築に当たり、解体する民家の柱・梁などの木材や建具などを新たな建物に受け継ぎ再生させることは、建築主の方にも私にも共通する想いでした。
丸太の梁が露出する豪壮な小屋組みの空間は、従来の日本の民家では土間や囲炉裏の空間の上部に拡がり、煙出しなどからわずかに差し込む光や囲炉裏の炎に時折浮かび上がる、漆黒の空間です。
けれども現代に新しく再生する民家として、闇の美しさではなく、光の美しさによる民家を考えたい、長い年月住まいを支え生活を見続けてきた柱と梁に光をあてて祝福したい、と私は願いました。
ガラス瓦による天窓で小屋裏を自然の光で満たします。吹抜の高い天井には全面に太鼓張りの紙障子を張り、その組子は豪壮な小屋組みに対して繊細なデザインとして、控えめに和紙に包まれています。小屋裏に充満した自然光は紙障子を通して柔らかく降り注ぎ、住まいの骨組みを美しく浮かび上がらせます。
小屋裏にはあえて照明を組み込まず、曇りの日には陰のある光を、そして夜にはひっそりと漂う闇に、と骨組みにも自然の移ろいと時間を与えるようにしています。
新たな衣をまとった骨組みたちが、光と影を映し悠然と時を刻む住まいです。
こちらからもご覧下さい。
民家再生.com > 飯盛の民家 - 軸組再生の住まい
http://minka-saisei.com/works/hansei/hansei.html
木村哲矢建築計画事務所 > 飯盛の民家 - 軸組再生の住まい
http://tetsuyakimura.jp/works/obama-u/obama-u.html
撮影 中村大輔
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