敷地は高度成長期に地方都市郊外の山を切り崩して作られた、ひな壇造成地です。周辺には分譲された当時から建っている家もあれば、世代交代で建て替えや改修もしくは新たに移り住んできて建てた家など、古い住宅地であるがゆえの少しいびつな風景が広がっていました。私たちはここに建つ住宅として、そんないびつさを引き受けたかのような住宅がふさわしいのではないかと考えました。まず建ち方としては、周辺のように斜路となっている前面道路に対してセットバックして住宅を建てるのではなく、斜路と敷地をつなぐ切り開き部分からまっすぐ敷地を横断するように空白のスペースを取り、東側の隣家に対してセットバックしているような建ち方が素直ではないかと考えました。そうすることで前面道路からは離れすぎず街とほどよい距離感を保ち、東側にはささやかながら明るい庭と駐車場を確保でき、北側の隣家に対してはこちらの影を落としすぎず、かつ気持ち良い風の通り抜ける場所ができ、西側には建物が寄っているので不要な西日をコントロールすることができます。西側に寄せたボリュームに対して、頂点の偏心した切妻屋根をかけ、軒の出を変えたり、切り欠いたりして内外の環境に反応しています。内部は長辺いっぱいに広がったワンルームのビッグスペースに対して、寝室、浴室、クローゼットといったスモールスペースを隣り合うように配し、スモールスペースから他の場所へ行くには必ずビッグスペースを通るようになっています。広くて高く明るい場所、狭くて低い落ち着く場所、狭いけど高い高揚感のある場所、など、立体的な空気の量を増やしたり減らしたりした上で、塗装、合板、クロス等、それぞれの場所に異なるマテリアルを割り当て、プログラムに関係なくさまざまな居場所をつくりました。1年を通じて寒暖の差が大きい内陸性気候であるこの地域での暮らしに、このいびつさが彩りをあたえます。
・コスト管理
・素材の割り当て方
・小さいスペースをいかに広く感じさせるか
マスケン
創造系不動産
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