建築家と家づくり 好きに暮らそう SuMiKa
家を育てる
2015年12月23日

ライフスタイルに合わせて、どんどん変えていく。リノベーションを重ねてつくる、自分好みの家

家を育てる

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最初は夫婦ふたりの暮らし。子どもが生まれて、子どもがだんだん成長して……。そんなふうに暮らしはゆっくりと、でも確実に変化していくものだ。暮らしが変化するなら、暮らし方も変わっていくのは自然なこと。住まいは、どんどん変わっていいものなのだ。

目黒のヴィンテージマンションに暮らす山本さん一家も暮らし方に合わせて住まいをリノベーションする。2006年と2015年に大規模にリノベーションをしたほか、DIYで家具をつくったり、エアコンを取り付けたりと、小さな変化も加えている。

そんなふうに住まいを変えるのはとても自然で簡単なことに見えるが、ちょっと腰が重く感じられるのも正直なところ。それでは山本さん一家は、どんな考えのもとそれを実施したのだろうか。山本さんご夫婦と、リノベーションを担当した建築家の まんぼう (一級建築士事務所まんぼう 一條美賀+一條太郎)さんに話を聞いてみた。


昭和レトロな目黒のマンションにひと目惚れ

山本さんご一家がヴィンテージマンションに引っ越したのは2006年12月。当時は夫婦二人きり。共働きをしながら「そろそろ自分たちの家でもほしいね」なんて話をしていた頃だ。当時を振り返って、

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ここに越してくる前は、目黒の賃貸物件に住んでいました。目黒にあるヴィンテージマンションの存在は以前から知っていて“趣のある、いいマンションだなぁ”と思っていたんです。ある日、それが売りに出されているのを見つけて。(一成さん)

そのマンションは2014年、大規模な修繕をして外側を塗ってきれいになったが、それまでは全棟外壁は打ちっぱなし。昭和っぽい雰囲気が漂うエントランスを抜けると、古めかしいマンション群が現れるのだが、その感じがとても素敵で、味わい深い建築物として知る人ぞ知る物件となっていたのである。

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「わたしたちはちょっとレトロな雰囲気のものが好きで」と陽子さんも当時を振り返る。

たとえば真っ白な新しい壁より、打ちっぱなしの武骨な感じ。手づくりのような質感があってそれでいてシンプルなものに、ふたりとも惹かれるんです。

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一級建築士事務所まんぼう 一條美賀さん

ほぼ一目ぼれのような格好でヴィンテージマンションに強く惹かれつつも、山本さんご夫婦はゆっくりと時間をかけていくつのもの家を見てまわった。

ほかの家を見てまわったのは、その感覚に間違いがないか、確かめていた感じでしたね。(一成さん)

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自分たちが暮らす家だから、好きにカスタムしたい

引っ越す前に住んでいた賃貸物件のときから、すでに好きな床板を自分たちで敷くなど、手軽なDIYを楽しんでいた山本さんご夫妻。
自分たちの暮らしだからこそ、カスタマイズも楽しみたい。そんな考えがあったので、マンションにはリノベーションありきで購入することにした。

そんな経緯で建築会社や建築家をさがしていたところ、出会ったのまんぼうさん。

建築雑誌にまんぼうさんの事務所が掲載されていて、その雰囲気がとっても気に入ったんです。こんな部屋にしたいと思って、すぐにまんぼうさんにアポを入れました。(一成さん)

まんぼうさんは以前、事務所を移転しようとした際に、候補地のひとつとしてそのヴィンテージマンションも検討したことがあるのだそう。

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「ああ、あのマンションですね、あそこならよく存じてますよ」なんて会話も弾んで、山本さんご夫妻とまんぼうさんは、急速に打ち解けることができた。

提案してくれるのではなく、
まず聞いてくれる建築家

山本さんご夫妻とまんぼうさんは、新しく購入したヴィンテージマンションの部屋を見学したり、当時山本さんご夫妻が住んでいた賃貸物件を見学したりしながら、どのような暮らしをつくっていくか話し合いを重ねた。

山本さんご夫妻は、以前、ふたり一緒に同じCDショップで働いていたことがある。サブカルチャーが好きで音楽好き。レコードも並ぶCDショップのような、椅子とテーブルにこだわりを持つカフェのような、そんな雰囲気をふたりとも愛しているのである。

わたしと夫はそっけないものが好きなんです。機能的につくり込まれているのではなく、自分たちで手を入れる余白が残っているような。(陽子さん)

だから、そんな家をつくろうと思った。

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たくさんの建築関係の人に会うなかで、まんぼうさんに依頼をしようと決めた山本さん。そのポイントのひとつに“趣味が合う”ということがある。

まんぼうさんは賃貸の家を見に来てくれたとき、部屋の様子にすごく共感してくださって。趣味が合うんですよね。提案をしてくるのではなく、まずはこちらの話をじっと聞いてくれて、寄り添おうとしてくれたところも大きいですね。(一成さん)

“使いこまれたレトロな雰囲気で暮らしたい”
“そっけないくらいシンプルに暮らしたい”
そんな山本さんの要望には建築会社よりも建築家のほうが向いているのかも。そんなふうにして山本さん一家とまんぼうさんの家づくりがはじまった。

90年代のカフェやCDショップのような雰囲気

最初のリノベーションの際、山本さん一家が出した要望は
“好きなものが見える暮らし”
“友達と集う暮らし”
“将来の変化に対応できる固定しない暮らし”。

賃貸のときから山本さんの家は、物が多い家だったが、それらを完全に収納するのではなく、見えるところに並べていた。
好きなものを並べることで、部屋の雰囲気をあえてつくった。

部屋をぐるりみわたしてみると、さっぱりとした雰囲気の家具や壁に囲まれて、小物、雑誌、雑貨などが家のあちらこちらにたくさん。
本棚の雑誌を見てみると、「Olive」や「BRUTUS」など、マガジンハウス系のものや「STUDIO VOICE」のバックナンバー、さらにアラフォー世代には懐かしい宝島社の「VOW」なんてタトルも並んでいる。

ほかにも「FLIPPER’S GUITAR」の譜面が並んでいるなど部屋のあちこちから90年代渋谷系の香りがふんわり。このおしゃれな雰囲気のベースは、どうやらそのあたりのカルチャーが下地になっているようだ。

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山本さんご夫妻は、部屋のベースさえつくってあげれば、あとは自分たちのやりたいようにつくり替えてしまえるはず。
そう考えたまんぼうさんは、大枠だけをつくり込むことにして、まずは、キッチンとリビングを仕切っていた壁は壊して部屋をスケルトン仕様に。
家の中心に、山本さんご夫妻がお気に入りの大きくて無機質な冷蔵庫をどっしりと空間の真ん中に置いて、その冷蔵庫が通れるように通路をつくるなど、部屋全体のレイアウトを固めていった。また、玄関は土間のようになっていて、仕切りを挟んでイケアの大きな箪笥やベッドを置いた。

2LDKだった部屋は、壁が壊れたことで広々とした空間に。隣り合うお風呂場とキッチンの間には窓をつくり玄関まで風がぬけるようにつくり変えた。

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リフォームを行う際、天井のダクトを外したが、そのときに空いた穴はあえて開けたままで放置。打ちっぱなしの壁にボコッ、ボコッと空いている。そんなちょっぴりハードな世界観も山本家ならではなのだ。

憧れに機能を加えたリノベーションを実践

2度目のリノベーションは、2006年からほぼ7年後の2014年にスタート。
その間に山本さんご夫婦の間には長男の響太郎くんが誕生。すくすくと成長してそろそろ小学校への進学を考える時期になっていた。

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再びリノベーションをしようと思ったのは
「もうすぐ小学生になる息子にちゃんと居場所をつくってあげたいなと思ったことが一番ですね。幼稚園に通っていた頃は、荷物を置く場所も決まっていませんでしたから」と一成さん。
そこから考えを広げて、わたしが仕事でつかうミシンを出しっぱなしにしておける場所もつくってもらうことにしました。(陽子さん)

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響太郎くんが生まれて、家族3人の暮らしになって、その暮らし方にもだんだんスタイルが見えてくる中、部屋もそれに合わせてリノベーション。
これからのスタイルにぴったりの生活動線はどんな感じなんだろう……。
みんなが心地よく暮らせる形はどんな感じなのだろう……。
2回目のリノベーションは、そんな家族の変化に合わせたものになった。

最初のリノベーションが山本さんご夫婦が好みのライフスタイルを実現するものであったとしたら、2回目は家族3人が家族として快適に暮らせる形を追い求めてのリノベーションとなったのだそうだ。

暮らしが変われば、これからも、家はきっと変わっていく

2度目のリノベーションでは、スケルトンにしたリビングはそのままに、玄関からリビングにかけての仕切りのないスペースを、再び区切りのあるスペースに分けることにした。
その際、生活動線を意識してお風呂場のそばにクローゼットのスペースをつくったり、空間を有効利用するために個室のうえにロフトスペースをつくったりと、家族それぞれのスペースを設置。
それまでよりも住みよい暮らしが実現できる家がつくられた。

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また、1度目のリノベーションは、賃貸の家に住む間にリノベーションが行われたが、2度目は住みながら。

そこは少し大変でしたね。まずは玄関まわりから手をつけはじめて、そこに置いてある荷物はマンションにある収納スペースに保管したり、リビングに置いておいたり。そして、部分的にリノベーションが終わるたびに荷物を戻すようにしました。
(陽子さん)

暮らしているスペースに、施工会社の人が頻繁にやってきて作業をするわけだから、奥様もさぞ大変だったろうと思うのだが、そんなことはなかった、と陽子さん。

ついつい施工会社の人と雑談が弾んでしまうことも、よくあったんですよ(笑)。

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息子さんが小学校にあがるということではじまった2度目のリノベーション。これからも子どもの成長に合わせて、また家族のライフスタイルの変化に合わせて山本さんの暮らしは変わっていきそうな予感だ。

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子どもがもう少し大きくなったら、いまミシンの部屋と子供の机を交換しようと思っています。(一成さん)

そのあたりは、ある程度まんぼうさんにも話を進めてきた。“暮らしは固定しておくもの”という考えを持たない山本さん一家。必要性を感じたら、これからもどんどん変わっていくことだろう。

text:井上晶夫  photo:伊原正浩

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