駅前の密集地に建つ、住宅と動物病院が一体になった建物です。
敷地は、駅前の雑居ビルが立ち並ぶ一角、幅員4Mの私道の突き当りにあり、四周を建物に囲まれるといった、動物病院の開業には少々不向きな条件の場所にあった。そこで施主は隣接する敷地のうち、東西北のどちらか一方が将来取得できた場合の増築を計画当初より要望している。
こうした問題への回答として、機能諸室をコンパクト納めた「内側の建物」と、その外周に展開する「立体的な路地」によって建物全体を構成することとした。
「内側の建物」には、動物病院では診察室や手術室、住宅では寝室や水廻りといった、機能諸室をスキップフロア状に配置している。その周囲に唯一前面道路に面した約2Mの間口を敷地奥まで延長して建物内に引き込んでいる。この路地状の空間は、地下では動物病院の待合室。住宅部分ではワークスペースであるとともに、機能諸室をつなぐ動線としても機能する。レンガタイルによる仕上げや、水平に連続する窓によって、半屋外的な場所として位置づけられた路地状の空間が、建て込んだ敷地において、視覚的、空気環境的なバッファーとして、また各機能諸室の拡張空間として機能することで、周辺との関係と建物の機能間の関係を緩やかに作り出している。
構造は、重機搬入の問題や地盤調査の結果から、RC壁式構造を採用している、構造壁はすべて「内側の建物」に配置し、外周部の「立体的な路地」はキャンティレバーで持ち出されている。また、階段を含め、キャンティレバー部分のレベルも複数設定することで、機能的だけだは無く、構造的にも、将来の増築にフレキシブルに対応できるよう配慮している。
積極的に外部との関係をとらえ、また敷地外への可能性を含む計画とすることで、住まう人や動物病院の成長に合わせて、建物自体が成長していくための「きっかけ」をはらんだ密集地における新たな可能性を提案している。
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