東京都下で新たにマンションを購入した同世代の家族から収納を増やしてほしいという依頼である。当初、クライアントとの対話で間取りを変えるリノベーションを含めて模索してみたが、そこまで操作する必要は無いと判断し、建築的な手法でちょっと手を加える(家具を付け足す)だけに留める事にした。
購入した住戸は西向きで一般的な3LDKプラン。分譲マンション(売り物)という特性から一つの住戸、一つの部屋という単位で考えられている。光の差し込む方向、窓から見える風景などを考慮しながらソファー・テレビや家具の配置を想像すると外部環境や方位に対して指向性が定まらない間取りであった。普段われわれは床に段差があれば下を向くし、閉鎖された空間で空が少し見えれば自然と目線はそちらを向き開放されている事を意識する。外に緑が見えれば安らぎを感じるし、外の天気が悪い時は内包感を抱き、良い時は窓を開け放ちたくなる。
そんな日常的に感じている感覚を無意識に心地よくさせるには空間における指向性の強弱が大切であると思っている。
テレビ中心の生活を奨励する訳ではないが、ソファーに寄りかかりテレビ方向を望むと右の掃出し窓からは南の空と緑が視線の中に入る事を念頭に置き指向性を整理してレイアウトスタディーを行った。
中廊下から続くリビング内の中心導線と人が溜まる場所で緩く結界を作り内包感を強調して空間の個性を強くさせた。ダイニング照明のシャンデリアに違和感が生じ無いようなコーディネイトである。クライアントの所有する濃いウッド色の持ち込み家具に今回付け足す収納家具も合わせており、既存の床色とは少々違和感があるがラグ等が敷かれる事を想定している。
収納家具を設置するだけのリノベーションであるが、住まい手の豊かな生活に少しでも多く寄与できないかを考え空間に変化を生じさせた事例である。
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