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記事作成・更新日: 2025年 3月 4日

ガルバリウム鋼板のメリット・デメリットを徹底解説!建築事例も5つ紹介

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南馬込の住宅 〜北側の斜面に建つ〜(納谷建築設計事務所)

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南馬込の住宅 〜北側の斜面に建つ〜(納谷建築設計事務所)

ガルバリウム鋼板は、近年、住宅や商業施設の外装材として注目を集めています。その優れた特性から、多くの建築家や施工主に選ばれていますが、一方でデメリットも存在します。

本記事では、ガルバリウム鋼板の特徴、メリット・デメリットに加えて、具体的な建築事例を詳しく解説します。これから建築やリフォームを検討されている方はぜひ参考にしてください。


ガルバリウム鋼板とは


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ネコと暮らすイエ2(Studio REI)

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ネコと暮らすイエ2(Studio REI)

ガルバリウム鋼板は、鉄を主成分とした鋼板に、「アルミニウム」「亜鉛」「シリコン」の合金をメッキ加工した建材です。この合金の組み合わせによって、従来のトタンや亜鉛メッキ鋼板と比較して耐食性が向上し、建築材料として幅広く活用されています。

特に、金属特有の耐久性と軽量性を兼ね備えており、屋根材や外壁材として採用されることが多く、住宅から商業施設までさまざまな建築物に使用されています。

ガルバリウム鋼板の特徴の一つとして、加工のしやすさが挙げられます。薄くて柔軟性があるため、複雑な形状の屋根や外壁にも適用できる点が大きな利点です。また、表面に施されたメッキ処理によって、長期間にわたって美観を維持しやすく、塗装のバリエーションも豊富なため、デザインの幅が広がるというメリットもあります。

近年では、環境への配慮から、より耐久性の高い建材が求められる傾向にあり、ガルバリウム鋼板の需要は増加しています。特に、メンテナンスの手間を減らしつつ、耐久性の高い外装材を選びたいというニーズに適合した素材といえるでしょう。






ガルバリウム鋼板のメリット


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心柱の家(モデルハウス)(戎野朗生建築設計事務所)

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心柱の家(モデルハウス)(戎野朗生建築設計事務所)

ガルバリウム鋼板には、多くのメリットがあります。
ガルバリウム鋼板を採用することで得られる主なメリットを詳しく見ていきましょう。

錆(サビ)に強く耐久性に優れている

ガルバリウム鋼板の最大の特徴は、その優れた耐食性と耐久性です。アルミニウムと亜鉛の合金メッキにより、表面に保護膜が形成され、錆の発生を効果的に防ぎます。これにより、過酷な環境下でも長期間にわたり美観と機能性を維持できます。

具体的には、従来のトタン屋根の耐用年数が約10~20年とされるのに対し、ガルバリウム鋼板は約25~35年と、他の建材と比較して高い耐久性を持っています。 適切なメンテナンスを行うことで、さらに長持ちさせることも可能です。

遮音性能が高い

ガルバリウム鋼板は金属製であるため、一般的には遮音性が劣ると考えられがちですが、実際には適切な施工や断熱材との組み合わせにより、優れた遮音性能を発揮します。特に、断熱材一体型のガルバリウム鋼板を採用することで、外部からの騒音を効果的に遮断し、室内環境を快適に保つことができます。

交通量の多い道路沿いや工業地帯などでも、断熱材一体型のガルバリウム鋼板を使用することで、静かな室内環境を実現できます。

断熱性能が高い

ガルバリウム鋼板は、断熱材と組み合わせることで優れた断熱性能を発揮します。断熱材一体型の製品を使用することで、外部の温度変化が室内に伝わりにくくなり、夏は涼しく冬は暖かい快適な室内環境を保つことができます。

この断熱性能により、冷暖房の効率が向上し、エネルギーコストの削減にもつながります。また、結露の発生を抑制する効果もあり、建物の劣化防止にもつながります。

スタイリッシュなデザイン

ガルバリウム鋼板は、そのシンプルで洗練された外観から、現代的でスタイリッシュなデザインを実現できます。フラットで滑らかな表面は、モダンな建築デザインに適しており、多彩なカラーバリエーションや仕上げ方法により、個性的な外観を演出できます。

また、他の素材との組み合わせも容易で、木材やコンクリートなどと組み合わせることで、独自のデザインを創り出すことが可能です。

補修や貼り替えが容易

ガルバリウム鋼板は、軽量で加工性に優れているため、補修や貼り替えが比較的容易です。万が一損傷や劣化が発生した場合でも、部分的な交換や修理が簡単に行えます。

また、既存の屋根や外壁の上から新たにガルバリウム鋼板を被せる「カバー工法」も可能で、工期の短縮やコスト削減にもつながります。これにより、全面的な張り替えを行う必要がなく、建物の耐久性を向上させつつ、美観を維持することができます。

さらに、施工の際にも柔軟性があり、形状が複雑な建物にも対応しやすいのが特徴です。特に、ガルバリウム鋼板は薄くて軽量なため、切断や加工が容易であり、DIYでのリフォームにも適しています。これにより、補修の手間を最小限に抑えることができるため、長期的にコストパフォーマンスの高い建材と言えるでしょう。

汚れが付着しにくい

ガルバリウム鋼板は、表面が滑らかで、汚れが付きにくい特性を持っています。そのため、雨水とともに表面の汚れが流れ落ちる「セルフクリーニング効果」が期待できます。特に、外壁材として使用する場合、埃や排気ガスなどの汚れがつきにくいため、長期間にわたって美しい外観を維持することが可能です。

また、コケやカビの発生を抑える効果もあり、定期的な掃除の手間が省けるのも大きなメリットです。特に湿気の多い地域では、従来の建材では外壁の黒ずみや苔の発生が問題になりがちですが、ガルバリウム鋼板を採用することで、これらの問題を大幅に軽減できます。

軽量性に優れ耐震性がある

ガルバリウム鋼板は、他の屋根材と比較して軽量であり、建物への負担を大幅に軽減できます。たとえば、従来の瓦屋根は1㎡あたり約60kgの重量がありますが、ガルバリウム鋼板は約5~6kg程度と、その1/10の重量です。この軽量性により、建物全体の重量が軽減され、耐震性が向上します。

特に、日本のように地震が多い国では、屋根や外壁の軽量化は非常に重要な要素です。重い屋根は地震の際に建物に大きな負荷をかけるため、揺れが大きくなりやすいですが、軽量なガルバリウム鋼板を採用することで、建物の重量バランスを改善し、揺れを抑えることが可能になります。






ガルバリウム鋼板のデメリット



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timeless(nanaba建築設計事務所)

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timeless(nanaba建築設計事務所)

ガルバリウム鋼板には多くのメリットがありますが、一方でデメリットも存在します。ここでは、導入を検討する際に知っておくべき注意点について詳しく解説します。

導入コストが高め

ガルバリウム鋼板は、高い耐久性と機能性を持つ一方で、初期費用が比較的高めです。特に、一般的なスレート屋根やアスファルトシングルと比較すると、施工費用がやや高くなる傾向があります。具体的には、スレート屋根の施工費用が1㎡あたり約4,000円〜8,000円程度であるのに対し、ガルバリウム鋼板の施工費用は6,000円~12,000円程度となります。

しかし、ガルバリウム鋼板は耐久性が高く、適切なメンテナンスを行えば30~40年以上使用できるため、長期的に見ればメンテナンスコストを抑えることが可能です。そのため、初期投資は高くても、トータルコストで考えると経済的な選択肢となる場合があります。

また、断熱材や遮音材と組み合わせることでさらに快適な居住環境を実現できるため、費用対効果の高い建材と言えるでしょう。

衝撃を与えると凹む可能性がある

ガルバリウム鋼板は薄くて軽量であるため、強い衝撃が加わると凹みやすいという欠点があります。たとえば、台風などの強風時に飛来物が当たると、へこみが発生することがあります。また、子どもが遊んでいる際にボールがぶつかるといった軽度の衝撃でも、跡が残ることがあるため注意が必要です。

これを防ぐためには、厚みのある製品を選ぶか、断熱材と一体化したガルバリウム鋼板を使用することで、衝撃に強い仕様にすることが可能です。さらに、施工の際には屋根の角度を考慮し、衝撃を受けにくい構造にすることも一つの対策となります。

全く錆びないわけではない

ガルバリウム鋼板は従来の鋼板よりも錆びにくい素材ですが、全く錆びないわけではありません。特に、切断面や傷がついた部分は、時間の経過とともに錆が発生する可能性があります。また、沿岸部や工業地帯など、空気中に塩分や化学物質が多く含まれる環境では、通常よりも劣化が早まることがあります。

この問題を防ぐためには、定期的なメンテナンスや再塗装を行い、表面の保護を維持することが重要です。特に、傷がついた部分には早めに防錆処理を施し、雨水や湿気の影響を受けにくい状態を保つことが推奨されます。

周辺環境に影響される

ガルバリウム鋼板は耐久性に優れていますが、設置環境によって性能が左右されることがあります。たとえば、直射日光が強い地域では表面温度が上昇しやすく、室内の温度が上がる原因になるため、遮熱塗装や断熱材の併用が推奨されます。また、雪が多い地域では、表面が滑りやすいため、積雪が一気に落ちるリスクがあり、雪止めの設置などの対策が必要です。

さらに、沿岸部では潮風に含まれる塩分の影響で、サビが発生しやすくなるため注意が必要です。特に、海沿いではメッキ層が劣化しやすく、放置すると腐食が進行することがあります。そのため、定期的な洗浄や防錆処理を行うことで、長期間にわたる耐久性を維持できます。

見切り縁(みきりぶち)が生じる

ガルバリウム鋼板は、金属板をつなぎ合わせて施工するため、見切り縁(パネルのつなぎ目)が目立つことがあります。これにより、デザイン面での好みが分かれることもあります。特に、フラットな外観を重視する場合は、目地の少ないデザインの製品を選ぶか、継ぎ目を目立たせない施工方法を検討する必要があります。

また、見切り縁の処理が不適切だと、雨水や汚れが溜まりやすくなり、経年劣化を早める原因になることがあります。特に外壁に使用する場合は、防水性を高めるシーリング処理を適切に施すことが重要です。施工の際には、見切り縁のデザインと耐久性の両面を考慮し、仕上がりを確認しながら進めることをおすすめします。






ガルバリウム鋼板の建築事例5選



ガルバリウム鋼板は、優れた耐久性とシンプルで洗練されたデザインが特徴の建材です。近年、多くの住宅や施設で採用され、モダンな外観を演出しながら、メンテナンス性の高さでも評価されています。ここでは、ガルバリウム鋼板を活用した5つの建築事例を紹介し、それぞれの設計の工夫や特徴を詳しく見ていきます。

① 大蔵・HOUSE・U

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この住宅は、家族がそれぞれの場所で自由に過ごしながらも、お互いの気配を感じられる空間設計が特徴です。外壁には無機質な質感が魅力のSOLIDOを採用し、屋根にはシャープな印象を与えるガルバリウム鋼板を使用。異なる素材が絶妙に調和し、洗練されたスタイリッシュな外観を生み出しています。

さらに、北側のボリュームを抑え、スキップフロアを活かした開放的な空間設計により、自然光や風を効果的に取り込み、心地よい住環境を実現しています。

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② 2世帯住宅+アトリエ 中庭のある家 House bsp

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この住宅は、ガルバリウム鋼板の外壁をベースにしながらも、玄関の軒下などに木材をアクセントとして取り入れることで、冷たくなりすぎない絶妙なバランスを実現しています。内装には温かみのある木材をふんだんに使用し、ガルバリウム鋼板のスタイリッシュさと木のぬくもりが調和した、オリジナリティ溢れる空間に仕上がっています。

中庭を中心とした設計により、光と風を効果的に取り込みつつ、周囲の建物に囲まれた環境でも開放感のある住まいを実現しています。

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③ 久喜の家

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築37年の木造住宅をフルリノベーションし、新たな魅力を加えた「久喜の家」。外観にはガルバリウム鋼板とモルタルを組み合わせることで、無骨でありながら洗練されたスタイリッシュな佇まいを実現しています。シンプルながらも素材の質感が際立ち、モダンでありつつも落ち着いた雰囲気を持つデザインが特徴です。

内部は、壁を取り払い開放感のあるLDKへと改修。吹抜けにすることにより、隠れていた柱や梁を活かしながら、新旧の魅力が共存する住まいに仕上げています。

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④ 美しが丘の家 建て替えによるスキップフロアの家

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この住宅は、同時期に分譲された家々が並ぶ落ち着いた住宅街に位置しています。外壁にはガルバリウム鋼板を採用し、無駄のないすっきりとしたデザインが街並みに美しく馴染んでいるのが特徴です。シンプルながらも洗練された外観が、統一感のある周囲の環境と調和しながら、程よい個性を演出しています。

内装に関しては、敷地の高低差を活かしたスキップフロア構成により、空間に広がりを持たせ、開放感と機能性を兼ね備えた住まいとなっています。

スキップフロアの構成により、居住空間の広がりと立体的な視線のつながりが生まれています。

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⑤ 子育て世代、回遊動線と素材を活かした家【豊橋の家】

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この住宅は、外壁と屋根に採用したガルバリウム鋼板のシャープな質感と、木材の温もりが絶妙に調和し、シンプルながらも存在感のあるデザインに仕上がっています。ガルバリウム鋼板の耐久性やメンテナンス性を活かしながら、玄関ドアやピロティー柱、サッシ周りに木材をあしらうことで、温かみのある印象をプラス。

内装にもラワン材や無垢フローリングを取り入れ、自然素材の心地よさを感じられる空間を演出しています。機能性とデザイン性を両立した、落ち着きのある住まいとなっています。

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まとめ:ガルバリウム鋼板を建築に取り入れて理想の住まいを手に入れよう


ガルバリウム鋼板は、耐久性・デザイン性・施工性に優れた建材として多くの建築で採用されています。錆びにくく軽量でメンテナンス性が高い一方、衝撃に弱い・初期コストが高めといった注意点もあります。
衝撃に対しては、厚みのある製品を選ぶ・断熱材と組み合わせることで補強が可能です。また、初期コストは高めですが、耐久性が高いため適切なメンテナンスを行えば長持ちし、長期的にはコストパフォーマンスに優れているという点も踏まえて検討すると良いでしょう。

今回紹介した建築事例では、木材やモルタルと組み合わせることで、デザインの幅が広がる点も魅力的でした。適切な施工と工夫次第で、スタイリッシュかつ快適な住まいを実現できるため、新築・リフォームの際にぜひ検討してみてください。

Text SuMiKa運営事務局

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