大きな家
一般的に、オーナー住戸付き賃貸住宅は最上階にオーナーが住み下階を賃貸住戸とすることが多い。ここでは再開発で引越しを余儀なくされたオーナー一家のために、設えられた「オーナー住戸」に皆で住むのではなく、将来の家族構成や社会の変化に耐えられる新たな住まいを提案することとした。そこで、住戸にヒエラルキーをつくらず、全部屋を全て異なるプランの賃貸住宅として設計することで、一家は各住戸を「個室」として選んで住むことができるようにした。時間に対する柔軟さ(家族構成の変化に応じて建物内を移り住んでいける)を、専有部/共有部間を閉じるでも開くでもなく破線状のエッジとすることで身体に対する適度な距離感(今までの住まいと同じ感覚でそれぞれの気配を感じられる)を、それぞれ合わせ持つ「大きな家」である。
内外の混交
敷地は、国道沿いの大型マンションと密集する低層木造住宅のちょうど中間に位置する。コントラストのある周辺環境の粒度や肌理を調停するスケールとして、1,350mm間隔で配した310mm角の柱梁によるフレームを設定した。このシンプルな構造の中央に、余白・余地としての「めぐり土間」、その周囲に「オープンテラス」、「インナーテラス」、「居室」といった小さな居場所が入り交じり、内外が混交しながら連続する空間構成により、網を重ねた中に空気を含んだ建築をつくりたいと考えた。
めぐり土間
「めぐり土間」(屋根と吹抜けを持つ共用階段)は、インナーテラスや住戸を抜ける光や風により、淀みや奥のない、内部のような外部のような明るさを持つ空間とした。さらに各踊り場にはベンチを設け、第2のリビングや書斎としての居場所にもなる。また、共用テラスにはアウトドアキッチンを設けた。さまざまな形を持つ13の住戸と共用部がにじみ合ってできる大きな気積の中で,各々の住人が三々五々,好きな場所で過ごすことのできるような計画とした。
資料請求にあたっての注意事項