建築家と家づくり 好きに暮らそう SuMiKa
2014年 6月12日

築47年の団地のよさを残す。機能美を携えたシンプルな住まい

賃貸で住んでいた団地を購入。住み慣れた間取りの不要な壁や欄間を取り除き、暮らしの場面に応じて、木製サッシの引き戸で仕切るプランにリノベーション。

text_Yasuko Murata photograph_Kai Nakamura

17211412-807c-44c4-a68a-e6f613767624
キャンバスに追加する
写真を拡大する

キッチンはステンレス仕上げ。正方形のタイルの目地はグレー。収納は厳選した食器が入る分だけ設け、シンク下もオープンに。

富士見台の家

・東京都国立市
〈設計〉小阿瀬直建築設計事務所 [SNARK]

82cfd50e-0b62-4299-81e2-b833739c3e0c
キャンバスに追加する
写真を拡大する

・住人データ
根本さんご家族
真路さん(32歳) グラフィックデザイナー
多恵子さん(38歳) 印刷会社勤務


 広い敷地内に南向きにゆったりと並ぶレトロな建物。年月を経て大きく育った樹木や植栽が包み込む穏やかな雰囲気は、古い団地ならではの贅沢な佇まいだ。根本真路さん、多恵子さんご夫妻は、そんな環境の豊かさに惹かれ、5年前からこの団地に賃貸で住んでいた。
「住み心地がよく、すごく気に入っていたので、ずっとここに居たいと思っていたんです」(真路さん)
 同じ団地内の分譲の物件で、1階角部屋が売りに出たのを知り、購入に踏み切ったご夫妻。もっと自分たち好みの家にできたらと、リノベーションの設計をスタートさせた。

8f464f37-2ce3-4196-8b90-b1ed91ee6f9a
キャンバスに追加する
写真を拡大する

左/玄関の框にも真鍮を使ってアクセントに。たたきのモルタル、オーク無垢材の床との組み合わせがモダンな印象。
右/棟の間隔が広く、ゆったりと建ち並ぶ団地。樹木や芝生の共用部など、都内とは思えない豊かな景観が広がる。

 設計は、真路さんの知人である建築家の小阿瀬直さんに依頼。
「根本さんの以前の住まいは、古い団地の空間にイギリスのアンティーク家具などを上手く合わせていて、バランスが取れていました。そのイメージを引き継ぎたいと思ったので、既存のディテールを残しつつ、無駄をそぎ落として、お二人が好むシンプルで機能的な住まいをつくろうと考えました」

59ea5a3a-6704-4511-ace7-3b6286c5f940
キャンバスに追加する
写真を拡大する

左/玄関側にある個室。現在は真路さんの仕事部屋として使用。
右/シンプルな家具が馴染むリビング。残した長押には、釘を打つこともできるため、絵や生活小物を引っ掛けるのに便利。

 既存の間取りは慣れ親しんだ以前の部屋と同じだった。そのため、居室や水まわりの大幅な移動はせず、開放感を妨げ、不要だと感じていた壁や欄間を取り除き、馴染みのある生活スタイルや動線をキープした。 
 LDK、寝室、廊下は、必要に応じて引き戸で独立させたり、つなげたりできるように工夫している。さらに、LDKと寝室を仕切る引き戸は、ラワン合板の木枠にガラスをはめ込み、視覚的な広がりも持たせた。

A0750a5e-7466-403d-811b-46ac0089ff9a
キャンバスに追加する
写真を拡大する

寝室とリビングダイニングは、必要に応じてガラスの引き戸で間仕切る。空調効率、開放感、採光などを同時に叶えるアイデア。

4fa05f6b-44b6-48dd-bdda-540ea1fc95ac
キャンバスに追加する
写真を拡大する

中/ともに料理好きという根本さんご夫妻。キッチンは使い勝手にこだわり、棚の配置などを決めた。
右/トイレは既存の設備を流用。配管の影響で一段下がる床を土間仕上げに。壁は工事中になくすことに決め、広さと明るさを確保。

 また、素材や仕上げを厳選することでも、各部屋に連続性をもたらしている。床は幅広のナラの無垢材で統一し、レールやドアノブなどのパーツには真鍮を使い、意匠的なアクセントに。壁は長押や廻り縁などの痕跡を残しながら、塗装してすっきりとした印象にまとめた。
「50㎡強のコンパクトな空間なので、収納を少なくしてもらい、持ちものを必要最小限にしたんです。その結果、家事や手入れがスムーズで、さらに居心地がよくなりました」(多恵子さん)

Db6ad547-009f-4a2e-9a95-fc7b9a8fbf00
キャンバスに追加する
写真を拡大する

左/ラワン合板でつくったカーテンレールは、飾り棚としても活用できる。
中/洗濯機、洗面、トイレをひとつの空間にコンパクトに収めている。
右/寝室。押入れをすっきりと収まるクローゼットに。

C2fe7964-5ff2-4433-aa70-99a763890f97
キャンバスに追加する
写真を拡大する

左/廊下と寝室の間に設けた垂れ壁には、通風のための窓。フレームはラワン合板。フックは真鍮。
中/洗面横の壁付け収納は、扉の裏側がミラーになっている。水栓はクラシカルなクロスハンドル。
右/キッチンのシンク下のサイズに合わせてつくったキャスター付きの棚。調味料などを収納。

 暮らす機能を追求して建てられた団地の本質的な魅力、時代を経ても変わらないよさを残し、現在のお二人の好みや生活に合わせアレンジした住まい。その空間は、リノベーションだからこそ生まれた、安らぎのある空気感に満ちている。

Dac6a3cd-0c12-444c-aae2-32534ca80638
キャンバスに追加する
写真を拡大する

仕事部屋から廊下の方向を見る。正面上の収納は、既存の天袋を活かし、扉のみ変更した。天井の下地もそのまま残した。


〈物件名〉富士見台の家〈所在地〉東京都国立市〈居住者構成〉夫婦〈建物規模〉地上5階建て(1階部分)〈主要構造〉鉄筋コンクリート造〈建物竣工年〉1965年〈専有面積〉50.85㎡〈バルコニー面積〉4.07㎡〈設計〉小阿瀬直建築設計事務所[SNARK]〈施工〉TANK〈設計期間〉6ヶ月〈工事期間〉2ヶ月〈竣工〉2012年〈総工費〉700万円


Sunao Koase

1153e936-af53-4eaf-94fc-1a2f3d15c17d


小阿瀬 直 1981年 群馬生まれ、仙台育ち。2008年 小阿瀬直建築設計事務所[SNARK]設立。09 年 群馬県中央児童相談所設計提案競技 優秀賞。11年 前橋市美術館プロポーザル 佳作。

小阿瀬直建築設計事務所[SNARK]
群馬県高崎市田町53・2 2F
TEL 027・384・2268
info@su-70.jp
www.su-70.jp


※この記事はLiVES2013年4月号に掲載されたものを転載しています。

関連する記事

前の記事

新旧の素材と技術を融合し、昔ながらの日本家屋を再生

次の記事

食べ物から、自分の暮らしを見つめなおす。福岡・糸島で狩...