これは樹齢700年という大銀杏がランドマークの古刹に,別棟で増築した東屋です. 願船寺は田園に囲まれた丘の上にあって,泉が湧き古墳から埴輪も出土する,山門や本堂の屋根並みが美しい江戸の佇まいを残した美しい場所です.
今回は長年ストックされていた杉の銘木を活かして「2台分の車庫」からスタート.途中で二棟になったり,そば打ちのイベントスペースにならないか?などなど2年半の紆余曲折経て,普段は車庫でイベントもできる大きさの明るく爽やかな屋根の下,ゆったりとした半屋外空間が出現しました.
4号特例建物なので,長方形のフットプリントをベースにその四隅から45度外側に構造壁を設けXとYの2方向の力を受持つ構造壁をデザイン上のアクセントにしました. これは片筋交いのみというピュアな構造体で,唯一の装飾として,伝統的な手法でもある一寸五分の角材を45度ひねりながら差し込んで微妙な陰影を出しました.
ご住職の「新建材嫌い」に共感して,全て木材は囲わず力強い木目表しのままシンプルに骨組みを見せました. 一方屋根は,耐候性が上がった梨地のポリカーボネイト波板として存在を消すことに徹しました.
眼前には美しい田園風景が広がり涼しい風が抜ける,刻々と自然の光とともに変化する明るく快適な半屋外空間が出来上がりました.そんな気持ちのいい場所へ近隣の人を招いて,伝染病なんか忘れて集い語らって,素敵な時間を過ごしてほしいと思っています.
・新しい生活様式にも,見晴らしのいい田園に囲まれた丘の上というロケーションにもマッチした,のびやかで気持ちのいい半屋外空間です
・力強く木目の美しい木の存在をダイレクトに感じられるよう,それ以外の要素はシンプルに徹しました.
・お寺さんの本堂や庫裏・母屋や倉庫など,今ある屋根並みに馴染みつつ,でもフレッシュな存在感は醸し出すような「爽やかな軽み」を意識しました.
お話をいただいてから気が付けば竣工までに2年半..適時足を運び,棟の配置や車の軌道の確認・眺望など,CGや模型,現地で水糸を張った..お寺さんならではの時の流れを感じながら,じっくり設計しました.
お寺さんは未来永劫きっと何百年も続くいわば「みんなに開かれた場所」です.たとえそれが60㎡ほどの東屋であっても,みんなが納得いくまで丁寧に進めて「造ってよかった」という建築にしたかったのです.
実際に竣工した時には,聡明なお寺のご住職夫妻も,工事のみなさんも,とても喜んでくれました.お寺さんの一角にさり気ないけれどフレッシュな建築を創れたと思ってます.
700年の歴史とこれからの未来をつなげる,透明で爽やかな現代建築
願船寺のご住職夫妻
(有)海野建築
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