敷地は浜松市の北部、古くからある農家と、その農地を切り売りして建てられた新しい住宅とが混在している地域にあります。
周辺の道路は農道をそのままトレースしたかのように迷路状に入り組んでおり、建蔽率が低くゆったりとした宅地が広がっています。
クライアントのご夫婦は庭での生活を楽しみながら子育てをしたいと、大きなのんびりしたこの土地を選びました。
長細い三角形の端をカットしたような敷地形状で、西側に市道、北側は隣家のための共有路、南側は斜めに通り抜ける2m幅の法外道路という曖昧な存在のみちに接しているため、
それら性格の異なるみちと庭の関わりを考えて建物の配置を決めました。子どもたちの登下校、畑仕事・神社への行き帰りなど、地域に住む人々が昔から日常的に使ってきた南側の
法外道路には写真スタジオとリビングが面し、そのまま家の中に入るには躊躇するけれど縁側のように座るにはちょうど良い高さの窓を設け、そのとおりみちがにわと曖昧に建物内部まで
繋がってくるような関係を作っています。また、敷地の唯一隣家と接する部分はキッチンとダイニングが面する庭とし、テラスでの食事や洗濯物干しなどプライベートな使い方ができる
ようにしたりと庭もそれぞれの部分で性格付けしています。そして周辺に合わせてヴォリュムを抑えるように勾配屋根としたトップの2階に寝室を配置しています。
構造は外周部が木造の在来工法、内部は2*4工法の木造のハイブリッド工法となっており、2*10の奥行きのある柱にはクライアント自ら棚を設置し、本やCD、置物などを収納しています。
これからゆっくりと樹木を植え、育てていこうとしているにわと通りみちの間には何の境もなく、建設時に出た土をそのまま積み上げた小山は子どもたちの遊び場となっています。
地域住民にとっても身近な公民館のような要素をもった建物になっていくと良いなと考えています。
掲載誌
新建築住宅特集 2016年1月号
http://www.japan-architect.co.jp/jp/works/index.php?book_cd=201601&pos=10&from=backnumber
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