都会から小豆島に移住し、農業をしながら古民家を改装してカフェをオープンした三村ひかりさん。
その日常の風景を綴る「小豆島日記」(『コロカル』で連載中)より。
子どもと過ごす時間を増やし、地域の中で育てていく。
5月になりました。
うちのすぐ横の水路にも水が流れ始め、いよいよ田植えシーズンです。
日に日にまわりの景色の彩度が上がっていくのを感じますが、
これでまた肥土山はグーンと緑になります。
秋に引っ越してきたわたしたちにとって、肥土山の春、夏はまだ未経験。
すごくワクワクする。
そんな初めての春の週末に、幼児園の親子遠足がありました。
いろは(うちのひとり娘、5歳)は、去年から地元の幼保一体の幼児園に通っています。
同じ年の子は5人、全園児24人の小さな幼児園。
山々に囲まれ、すぐ横に田んぼや畑が広がる本当に自然豊かな場所にあります。
遠足の行き先は、瀬戸内国際芸術祭2013(以下、瀬戸芸)のアート作品「小豆島の光」。
肥土山のお隣の集落「中山」にある、地元産の約5000本の竹で組んだ巨大ドームです。
台湾のワン・ウェンチー(王文志)さん の作品で、
棚田で囲まれた中山地区の谷間にどーんと構えるその様は圧巻。
すごい存在感なのに、不思議と中山の風景の中に溶け込んでいる、そんな作品。
ちなみに幼児園のみんなは「竹のいえ」と呼びます。
幼児園から竹のいえまでは、歩いて約2キロ。
40分くらいかけて、親子で手をつないで、
田んぼのあぜ道や森の中の道を歩いて行きます。
実は子どもたちは竹のいえの完成前にも歩いて見に行ったことがあります。
ここの幼児園はとにかくよく歩く。
何もない普通の日でも往復で2時間くらい散歩することがあり、
ある意味ほぼ毎日遠足(笑)。
その歩く道も平坦な道路じゃなくて登り坂、下り坂が多く、
未舗装の道、ちょっと危ない川に落ちそうな道もあったり。
そして何より、そこにはたっぷりの自然があり、
畑があり、お寺があり、おっちゃんおばちゃんがいる。
散歩の途中で、畑に寄ってみかんを収穫したり、お寺に寄ってお茶をもらったり、
そういう風景が普通にあるのはとても素敵だなーと思います。
さらに今年は瀬戸芸の年なので、そこにアート作品が加わる。
幼児園のすぐ近くに、長澤伸穂さんの「うみのうつわ」、
齋藤正人さんの「猪鹿垣の島」があり、そして少し歩けば「小豆島の光」、
秋には武蔵野美術大学わらアートチームによる「わらアート」も登場します。
アートと自然を楽しむことができる遠足、
ここならではのとても素敵な遠足だなと感じました。
子どもたちにとってはアートも自然も同じで、構えることなくただ楽しむ。
歩いてる途中にイタチを発見して「わぁぁぁ!」と走り寄ったり。
竹のいえの中でも、ごろごろしたり、走り回ったり。
竹の匂いを嗅いで「バニラのにおいがするー!」とみんなできゃっきゃしたり。
そして帰り道、肥土山離宮八幡神社の横にある農村歌舞伎舞台の桟敷でお弁当。
300年以上続く伝統芸能の舞台を身近で感じながら。
こんな風景のある小豆島の里山で子どもを育てる。
わたしたちが引っ越してきた理由のひとつでもあります。
一緒に過ごす時間を増やし、地域の中で育てていく。
リタイア後に田舎で暮らすのも素敵ですが、子育て世代こそ面白いのかもしれません。
もちろん大変なこともたくさんありますが(笑)
これから子どもがどんなふうに成長していくのか楽しみです。
writer’s profile
Hikari Mimura
三村ひかり
みむら・ひかり●愛知県生まれ。2012年瀬戸内海の小豆島へ家族で移住。島の中でもコアな場所、地元の結束力が異様に強く、昔ながらの伝統が残り続けている「肥土山(ひとやま)」という里山の集落で暮らす。移住後に夫と共同で「HomeMakers」を立ちあげ、畑で野菜や果樹を育てながら、カフェ、民宿をオープンすべく築120年の農村民家を改装中。
http://homemakers.jp/