敷地は、奈良市郊外、落ち着いた住宅街にある。家族5人と同居予定の母親のための 二世帯住宅を建てる計画である。 眺望はあまり期待できない状況であり、敷地の中で魅力的な風景=庭を形作り、眺 める住宅、というものが構想されていった。 生活の中で長く付き合っていくには、生け花のような庭ではなく、造園の意図があ まり強く意識されない庭がふさわしく、庭は、家の各所から垣間見える風景とし て、静かに心を打つものでなければならないと考えた。 周りを住宅で囲まれているため、普通に作庭しても眺めから隣家を消すことは困難 であるが、高い板塀で周囲を囲うことがなじむ周辺環境ともいえない。 東庭は、リビング、玄関、和室、そして2階から降りる階段と、あらゆる居室や動線 へ眺めを提供し、様々な表情を見せる。手前から奥へ1m程盛り上げた斜面に高木を 適宜配置して周辺の住宅を景色から排除している。庭の核となるのは、高さ10mを 超える3本のセンペルセコイヤである。住宅では見かけないスケールの高木と庭の周 縁の斜面の木々が相まって、深い森が広がっているような錯覚を覚えるほど、緑の 奥行きが感じられる。 緑を眺める行為とプライバシー確保の両立を、塀をともなった中庭形式で解決する ことも多いが、この住宅では、H型平面と樹木の配置によって解決している。 和室は玄関を挟んだ母世帯側にあり、主世帯から見ると離れのような風情となる。
資料請求にあたっての注意事項