この建物は筋ジストロフィーという病気を持ち、電動車椅子で生活し全面介助の必要な22歳の青年と、その妻の為の住宅である。
二人の要望は、「機器を設置し、楽だけを追及したバリアフリー住宅ではなく、シンプルで格好良く、オンリーワンで幸せな空間」。障害をなくすだけではなく見ためのバリア、言わば「心のバリア」をデザインの力で解消出来るという我々の考えと合致し、家創りがスタートした。
敷地は道路との高低差が約1.3mあり、それを解決する為に緩やかなスロープを北側に設けた。中庭を囲むように居室を配置し、プライバシー性の高い外部空間をつくり出した。中庭を介して室内外を見渡す事ができ、介護をしながら家事を行う点でも有効な配置とする。
中庭と室内の床をフラットとし、床材を同色でまとめ平屋特有の水平の広がりを演出。
中庭側の開口部は60Φの鉄骨柱で梁を支えるハイブリッド構造を採用。柱の存在を消すことにより、居室と中庭との繋がりを強調。
各所の高さは、青年がなるべく自分の力で操作できるよう打合せを重ねた。
結果、バリアフリー住宅とは思えないシンプルで素直な空間が出来上がった。我々はこの住宅に、今後高齢化が進む我が国において、新しい扉を開けられるヒントを見出せた気がします。
要求が多様化する時代に、施主の生活像や住まい方への理想をそのまま敷地に映し出したような「ピュアで新鮮な建築を」という理念に一歩近づけたと思います。
○ 中国電力主催「2005 電化住宅建築作品コンテスト」入選
http://www.denkajutaku.com/contest/
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