ZEH住宅とは、断熱性と省エネ性に優れている上、太陽光発電などでエネルギーを創り出せる住宅のうち、一定の基準をクリアした住宅のことです。一般的な住宅よりも建築費用や購入価格が高額になりますが、地球環境にやさしく、健康で快適に過ごすことができるので、検討する価値があります。
ZEH住宅とは何か?ZEH住宅のメリットやデメリット、ZEH住宅の補助金について解説します。
ZEHとは何か?
ZEHは、ゼッチと読みますが、Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の略称で、次の3つの要素を備えた省エネルギー住宅のことです。
・省エネルギーである。
・エネルギーを創り出せる。
これによって、その住宅で一年間に消費するエネルギーの量と創るエネルギー量を差し引いてゼロになることを目指します。
政府は2050年カーボンニュートラルの実現に向けて様々な環境政策を打ち出していますが、ZEH住宅の普及もその一環として行われています。
ZEHの3つの要素とは?
ZEHの3つの要素は、次のとおりです。
・省エネルギーである。
・エネルギーを創り出せる。
それぞれ、どのような意味があるのか、また、それを実現するためにどのような設備が利用されるのか解説します。
ZEHの要素1 高断熱である。(外皮基準)
高断熱とは、夏は涼しく、冬は暖かく過ごせる住宅のことです。
夏場は外からの日差しや暑気が住宅内部に入り込まないようにし、冬場は暖房等の熱が外に逃げない状態を目指します。
そのためには、住宅の外壁や窓などの断熱性能を高めることがポイントです。
住宅の断熱性能を示すために「断熱性能等級」という指標が用いられています。
下記の表のように等級7から等級1までの7段階に分けられており、数字が多いほど断熱性能が高まります。
断熱等性能等級7 | HEAT20・G3基準相当 |
---|---|
断熱等性能等級6 | HEAT20・G2基準相当 |
断熱等性能等級5 | ZEH・長期優良住宅基準 |
断熱等性能等級4 | 平成25年基準 相当 |
断熱等性能等級3 | 平成4年基準 相当 |
断熱等性能等級2 | 昭和55年基準 相当 |
断熱等性能等級1 | その他 |
断熱等性能等級7 | HEAT20・G3基準相当 |
---|---|
断熱等性能等級6 | HEAT20・G2基準相当 |
断熱等性能等級5 | ZEH・長期優良住宅基準 |
断熱等性能等級4 | 平成25年基準 相当 |
断熱等性能等級3 | 平成4年基準 相当 |
断熱等性能等級2 | 昭和55年基準 相当 |
断熱等性能等級1 | その他 |
そして、ZEH住宅で求められているのは、「断熱等性能等級5」です。
断熱等性能等級5を満たすための戸建住宅の断熱仕様は地域によって違いますが、東京の場合だと次のような仕様が紹介されています。
天井:吹込み用グラスウール 18K 210mm
外壁:高性能グラスウール 16K 105mm
床:【内側】高性能グラスウール 24K 42mm+【外側】高性能グラスウール 24K 80mm
窓
アルミ樹脂複合サッシ+Low-E複層ガラス(A10)
参照サイト
https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001443042.pdf
つまり、天井、外壁、床に張り巡らす断熱材の厚みと窓がポイントになるということです。
ZEHの要素2 省エネルギーである。
省エネルギーであるとは、住宅内で使う空調設備、給湯設備、換気設備、照明設備の性能が高く、エネルギー消費が少ないものであるという意味です。
家電メーカーや住宅設備メーカーから、ZEH対応のエアコン、エコキュート、換気扇、LED照明などが販売されているので、それらの設備を取り入れることで、この要件を満たすことができます。
また、HEMS(ヘムス)の導入も必要です。
HEMSはHome Energy Management System(ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)の略称で、エネルギーの消費量や発電量を可視化できるシステムです。
ZEHの要素3 エネルギーを創り出せる。
エネルギーを創り出せるとは、太陽光発電システム等の再生可能エネルギーシステムによって、住宅内で使用する電力等を生み出せるということです。
太陽光発電システムを導入する際は、どれだけの発電量を生み出せるかがポイントです。
屋根に太陽光パネルを設置すればそれでよいというわけではなく、設置する方角や角度を考慮したうえで、発電量を最大限高める必要があります。
そのためには、設計の段階から、太陽光パネルを設置することを前提に屋根の形状を考えなければなりません。
現時点では、ZEH基準をクリアする為の発電量は設定されていませんが、4~6kwが目安になるとされています。
ZEHの種類
ZEHは、住宅の形態や地域の実情に合わせて、様々なタイプが用意されています。
例えば、戸建て住宅と集合住宅とでは、基準が異なりますし、多雪地域や狭小地では、太陽光パネルの設置に向きません。
それらの点を考慮して、様々な種類のZEHの基準が用意されています。
まず、ZEHは大きく、「ZEH」と「ZEH-M(ゼッチマンション)」に分かれます。
ZEHは戸建て住宅、ZEH-Mは集合住宅向けの基準です。以下は、戸建て住宅のZEHを前提に解説します。
ZEH
ZEHは、省エネ基準から20%以上の一次エネルギー消費量を削減し、再生可能エネルギー等を導入することで、100%以上の一次エネルギー消費量削減を実現した住宅のことです。
つまり、住宅の外皮の断熱性能を高めて、効率的な設備を導入することで、室内の快適な環境を省エネルギーで実現できるようにします。
そして、太陽光発電システムを導入することで、年間の一次エネルギー消費量の収支をゼロとすることを目指す住宅という意味になります。
ZEH+
ZEH+は、ZEHの基準を上回る性能を有する住宅のことです。
具体的には、省エネ基準から25%以上の一次エネルギー消費量を削減し、次の3つのうち、2以上の要件を満たす場合です。
・高度エネルギーマネジメント(HEMSの導入)
・電気自動車への給電設備
次世代ZEH+
次世代ZEH+は、ZEH+の基準を満たした上で、
・蓄電システム
・燃料電池
・太陽熱利用温水システム
・太陽光発電システム10kW以上
のいずれかを導入している場合です。
Nearly ZEH
Nearly ZEHは、ZEHを緩和した基準です。寒冷、低日射、多雪地域では、エネルギー消費量がどうしても多くなるため、再生可能エネルギー等を導入することによる100%以上の一次エネルギー消費量削減を実現できていなくてもよいものとしました。
具体的には、省エネ基準から20%以上の一次エネルギー消費量を削減し、再生可能エネルギー等を導入することで、75%以上の一次エネルギー消費量削減を実現した住宅とされています。
ZEH Oriented
ZEH OrientedもZEHを緩和した基準です。都市部狭小地、多雪地域などでは、屋根に太陽光パネルを設置するのが適当ではないこともあります。
このような地域では、太陽光発電システムを導入せずに基準を満たすことも可能です。
具体的には、省エネ基準から20%以上の一次エネルギー消費量を削減した住宅のことです。
ZEH住宅のメリット
ZEH住宅には様々なメリットがあります。
経済的である
ZEH住宅なら、光熱費を抑えることができます。夏場の冷房、冬場の暖房の効率が良くなりますし、普段から使う給湯設備、換気設備、照明設備のすべてが省エネルギー仕様だからです。
また、太陽光発電システムが効率よく稼働しているときは、売電できるので収入を得ることも可能です。
快適に過ごすことができる
ZEH住宅なら、真夏でも真冬でも快適に過ごしやすいです。一ヵ所の部屋だけでなく、家全体が快適な温度を保つことができるので、部屋の出入りも苦痛になりません。
健康に過ごすことができる
ZEH住宅なら、部屋の間の温度差が少ないため、ヒートショックによる心筋梗塞等の病気を防ぎやすいです。
また、夏場は熱中症の危険が少ないですし、冬場も暖かい環境なので高血圧になるリスクを抑えられます。
結露やカビの発生も抑えられるので、健康に良い環境で過ごすことができます。
室温が18℃未満、床付近の室温が15℃未満だと、高コレステロール値の異常、高血圧、糖尿病といった健康リスクが高まると言われていますが、ZEH住宅ならそれ以上の室温を維持しやすいです。
快適な室温だと冬場でもこたつがいらなくなり、活動的になるため、身体活動時間が増えます。
災害に強い
ZEH住宅は、太陽光発電システムにより電気を創り出せるうえ、蓄電池で電気を貯めておくこともできるので、自然災害が発生した際に停電したとしても安心です。
ZEH住宅のデメリット
ZEH住宅にはデメリットもあります。
建築費用が高額になる
ZEH住宅の基準を満たすためには、断熱材や窓にグレードの高い建材を用いなければなりませんし、設備も高額なものを導入する必要があります。
加えて、太陽光パネルの設置工事なども必要になりますから、一般的な戸建て住宅よりも建築費用が高額になります。
設備のメンテナンス費用も掛かる
ZEH住宅で導入する設備は、いずれも定期的なメンテナンスが必要になります。
太陽光発電システムにしても半永久的に使えるわけではなく、耐用年数が過ぎたら交換しなければなりません。
設備だけでなく、建物自体も外壁や屋根の塗装やシーリングの打ち直し等の定期的なメンテナンスが必要です。
こうした設備や建物のメンテナンスでは、数十万円以上の費用が掛かるので、資金計画を立てておく必要があります。
建物の外観や間取りの自由度が失われる
ZEHの基準を満たすためには、建物の外観や間取りが制限されます。
建物の外観については屋根が大きな影響を受けます。
屋根は、太陽光パネルを設置できる形状にしなければなりません。また、瓦だと重量が重くなるため、金属屋根などの軽量な屋根が推奨されます。
また、屋根に太陽光パネルが載っているのが見えるため、それが気に入らないと感じる方もいるかもしれません。
間取りについても、狭く閉鎖的な空間になりがちです。
広い部屋だと、冷暖房の効率が悪くなるため、必然的に部屋は狭くなります。
高い天井や吹き抜けといった開放的な空間は作りにくくなります。
また、窓は、熱損失が高い部分なので、極力小さくしなければなりません。
そのため、掃き出し窓などは少なくなり、庭がある家でも庭との一体感を感じにくくなることがあります。
さらに、二重窓になるため、窓を開けたり、掃除する手間が余分にかかり、その点を煩わしく思う方もいるかもしれません。
ZEH支援事業とは
住宅を新築したり、新築の建売住宅を購入した際に、その建物がZEHの基準を満たしていれば、ZEH支援事業の補助金(二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金)を受けることができます。
令和6年度のZEH支援事業の場合は次の金額でした。
ZEH | 1戸当たり55万円 |
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ZEH+ | 1戸当たり100万円 (ZEH+の選択要件ごとに10万円から25万円加算) |
ZEH | 1戸当たり55万円 |
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ZEH+ | 1戸当たり100万円(ZEH+の選択要件ごとに10万円から25万円加算) |
また、次のような設備を導入した場合は、それぞれ追加設備の補助金が受けられました。
蓄電システム | 上限20万円 |
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直交集成板(CLT) | 定額90万円 |
地中熱ヒートポンプ・システム | 定額90万円 |
PVTシステム | 方式・パネル面積により 65万円、80万円、90万円 |
液体集熱式太陽熱利用温水システム | パネル面積により12万円、15万円 |
蓄電システム | 上限20万円 |
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直交集成板 (CLT) |
定額90万円 |
地中熱ヒートポンプ・システム | 定額90万円 |
PVTシステム | 方式・パネル面積により65万円、80万円、90万円 |
液体集熱式太陽熱利用温水システム | パネル面積により12万円、15万円 |
なお、給湯省エネ2024事業(燃料電池(エネファーム)を除く)、子育てエコホーム支援事業との併用はできないため、どちらが有利かを見極めて申請する必要があります。
※令和7年度については、記事執筆時点で詳細は明らかになっていません。
参考サイト https://zehweb.jp/
ZEHの建築事例3選
①絶景を望むZEH仕様の高性能住宅


絶景を望むZEH仕様の高性能住宅です。
敷地の高低差を活かし、地下駐車付きのスキップフロア型の住宅です。
高台の眺望を活かして、1階のLDKからも絶景の景色を望めます。
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②中二階のある家(高気密・高断熱、ZEH)


中2階のある家。
比較的、住宅が密集して建つ地域での計画。
中二階から光がふりそそぐ家。
床はオーク無垢。
キッチンはKitchenHouseにて。
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③外部はシックに 内部は温かく


建築場所はヒマラヤスギの並木道に面していて、植物園の中にでもいるような緑豊かな風景が望めます。
ご家族の個室は西向きですが並木で影になることもあり、窓は通常の大きさを確保しています。
猫好きのご一家で、各所、猫の喜ぶ家づくりにもなっています。
延べ面積は30坪の平均的な大きさで、限られた予算に納めるべくシンプルな構成です。外部は無機質のサイディングですが、内部は無垢の木材を中心に使用しております。
外皮性能(断熱)はZEH基準のUA値0.6をクリアーしています。
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まとめ:ZEH住宅で地球環境にやさしく健康で快適な生活を手に入れよう
ZEH住宅は、地球環境にやさしく、健康で快適な住環境を手に入れるための最良の選択肢と言えます。
ZEH住宅には、経済性、健康面や快適さ、災害時の備えになるといったメリットがあります。
一方で、建築費用が高額になることやメンテナンス費用が掛かること。また、建物の外観や間取りの自由度が失われるというデメリットもあるのでその点はよく考えましょう。
ZEH住宅を新築したり、購入した際は、ZEH支援事業による補助金も得られるので、検討してみてください。
Text SuMiKa運営事務局
ライタープロフィール
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