サンドイッチハウスを終えた私は、建物の出来映えと喜ぶ姉家 族の笑顔に、充実感を感じていた。しかし同時に、予算の大幅 増加を強いてしまったことを深く反省していた。特殊な空間構 成を成立させるために構造コストが割高になった上、背戸を演出しようと素材感にこだわったのが原因だった。予算管理の重 要性を改めて肝に銘じ、次の機会にどう生かそうかと思ったとき、ふとひとつの疑問が頭に浮かんだ。空間構成と素材感、ど ちらを優先させるのか?それはお施主さんの好みによるよな? と思いつつ、もし自分の家だったら素材感かな??! サンドイッチハウスの経験を経て、どうやら自分の好みは変わりつつあるようだった。
そんな折、私が住んでいた賃貸マンションのオーナーさんから リノベーションの相談を持ちかけられた。築38年のマンションの1室をフル改装するのだが、良ければそこに住まないかと。 もちろんこぢこぢさんの好きにして良いよと。二つ返事で快諾したが、37m²の部屋をどのようなスタンスで設計すべきか··· みんなが、アッ!と驚く部屋をつくるのか。はたまた妻と私が日々をゆったりと過ごせる家をつくるのか。私は後者を選ぶことにした。37年前の躯体とアルミサッシは想像以上にくたびれ た感じで、味というより粗野という言葉がぴったりだった。しかしツルピカの質感に違和感を覚えるようになっていた私にとっては、非常に魅力的な素材に思えた。その力強さに負けない 素材として、幅広オーク床・木網セメント板・古材足場板・白ガス管を組み合わせ、私たち夫婦のための部屋Room402が出来上がった。
自分が住む家を自ら設計する。この経験は私の設計スタンスに 大きな影響を及ぼし、見たこともないような面白い家ではなく、 心穏やかに過ごすための「心地のいい家」を目指すきっかけとなった。
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