人に優しく、まちに優しく。
地元の人々に親しまれる診療所をめざして。
高校の同級生であった歯科医のF氏とスポーツジムで偶然出会い、近々独立を考えてるとの話があり、その相談から診療所の設計がはじまった。
場所は、かつてそろばんの産地で全国に知られていた兵庫県の小野市で、古墳や国宝浄土寺等がある豊かな文化財を保有するまちである。福岡くんの生まれ育ったふるさとでの開業とあって、より地域に根付いた診療を行いたいとの意気込みを強く感じながら設計を進めていった。
設計にあたって、はじめに、F氏が小野市のまちを見てもらいたいとのことでぐるりと案内して頂いた。ゆったりと流れる加古川の景色と方形の大屋根をどっしりと構えている夕暮れ時の国宝浄土寺がとても印象てきでした。
構造は、当初、ゆったりとした木造平屋の診療所で進めていたが、より地元に根付いた診療を行っていきたいとの考えから二階建て住居併用の診療所に変更され、イメージと予算はそのままに鉄骨造にて計画することとなった。
外観は、F氏との会話の中からイメージし、周囲の環境になじみながら控えめに目立つ、周辺環境にやさしい建物になるよう心がけた。完成した建物は、歯科医院特有の雰囲気と異なり、開放的で、一見すると歯医者さんとはわからないようなあたたかな雰囲気の建物となり、結果的に、F氏のおおらかな人柄がイメージづくりの大きなポイントとなった。
診療所のプランニングとしては、患者のための空間を、できる限り開放的で日当たりの良い場所に配置し、また、診療側の動線をコンパクトなループ方式でまとめることで、作業動線の合理化をはかり、限られたスペースの中での広い診療ブースの確保につとめた。また、診療台は、現在は2ユニットであるが将来の増設や機器の取り替えを考慮し、床下に高さ450㎜ほどの配管スペースを確保した。
仕上げ材は、歯科医院特有の恐怖感や痛みをこらえてこられる患者の気持ちを少しでも和らげられるように、患者の動線部分には、木・左官・石などの自然素材による仕上げとし、視覚的に触覚的に安心感を得られるように心がけた。
また、外構のアプローチ部分は、私と一緒に医院長自ら材料の丹波石の産地へおもむき、材料を検分、購入し、左官職人井上さんの指導のもと、家族の方や、医療機器の営業マン、私の友人、現場の工事主任さんなど現場に来られた色々な方にも飛び込みで参加して頂き、自力建設にて石畳のアプローチを作り上げた。家族の建物への愛着と開業に向けての更なる意気込みが感じられた。
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