敷地は山の南西斜面を雛壇上に造成した宅地の最上段にあり、北側は山に囲まれ、南側は市街を見わたせる眺めの良い場所である。建主のご夫婦は庭作りが好きで、長年手を掛けてきた敷地の南西側の庭を残し、それを活かす空間作りが求められた。また現在の6人の家族構成が将来変化したときも住みつないでゆけるプランが求められた。
庭を楽しめる住空間をつくるため、敷地を三つの庭に分ける壁として細長い家を配置し、外の部屋である庭と内部空間が密接に関わり合うように計画した。敷地のどこにいてもいずれかの庭が見え、窓越しに外→内→外と向こうにある庭を透かし見ることができるように窓を開けた。これにより内にいても外にいても敷地全体を見わたせる空間が生まれている。
家のプランは各人の個室とそれらをつなぐ空間から成っている。つなぐ空間は階段を中心に緩やかに分けられ、各人が程よい距離をとって過ごせる場所として考えた。窓枠や階段、本棚などは腰掛けても良い場所としてデザインされ、過ごし方のバリエーションを豊かにしている。5つの個室はシンプルな形状ながら階や天井高によりそれぞれ異なる空間となるようにした。将来家族構成が変わったとき、部屋を引っ越しながら住みつないでいくことを想定している。
庭を眺めるために空けた窓はさまざまな方向からの光を取り込む。太陽の移動と共に住宅内部の光環境は変化する。朝は東側の高窓からさわやかな光が入り、夕方は西側の窓から庭の木々やブラインドの陰と共にゴージャスな光が入る。このように時間や季節と共にさまざまに空間が変化する。この変化が生活に彩を与えることを期待している。