広島駅からほど近い敷地周辺には、商業施設や中層集合住宅、そして低層の住宅など、様々なスケールの建物が混在している。西側と北側には低層住宅が接し、隣地の駐車場を挟んで車通りの多い東側の幹線道路沿いには、中層の店舗付き集合住宅の立ち並んだ街路景観が形成されている。
三世代にまたがる二世帯6人家族の住まいとして家族それぞれの居場所のある住まいであること、また家族構成の将来変動を見据えた計画あること、これがこの住宅で求められたテーマである。具体的には、二世代目となる夫婦だけの生活を見据え、間仕切り壁を追加し、キッチンや水廻りを増設することで、完全に分離した新たな二世帯の住宅へと改変を可能とする時間軸を持った住宅計画となっている。
駐車スペースを確保しながら、中層の街路景観に溶け込むように矩形のボリュームとして重層させた内部では、家族の居場所をつくるのと同時に、改装時の手数を最小限にするように、諸室構成と動線設定を丁寧にシミュレーションしながらスタディを重ね、壁を2箇所だけ新設することで住戸が完全に分かれる計画とした。 将来分割され新たな一世帯として想定されるエリアとなる1 ,2階の一部に、親世帯の生活の場と子供部屋を配した。一方、もう一つのエリアには、当面共用するダイニング、キッチンや水廻りを中間階となる2階に設けて、3階にリビング、寝室を配した。これらの諸室は中央の螺旋状階段やその他の階段によって縦方向に繋ぎながら、動線が互いに絡まることで、立体的に回遊可能な平面・立体構成となっている。
中央の階段に沿って用いた曲面の壁は、分節する内部空間に柔らかい凹凸を作り出し、分節と同時に、表と裏が互いに連続する空間構造を生み出している。この内部空間の連続体に、テラスや吹き抜けを挿入することで、上下、水平、そして斜めへと様々な抜けをつくり、その延長として外部へとそっと繋がる開口部を重ねることで、様々な方向から優しい光で包まれた白い闇のような空間を創り出した。
時間軸を伴う特殊な要望のなか、2つに分節可能な生活の場を単純な箱の中に絡まり合いながら集約させたこの住宅は、内部空間同士の立体的な絡まり合いの先に、諸所で設けた開口部と共に、手を伸ばすようにやさしく周辺環境に繋がる生活の場として結実した。
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