敷地は兵庫県西宮市の市街地にあり、バブル期に造成、建築された建売住宅の一角の建て替え計画です。敷地面積は13坪という狭小地で、60代の夫婦と成人した子どもの3人のための住宅です。
お施主さまの主な要望は以下の通りです。
・住んでいく中で必要な棚や家具を増設できるように、内装は構造用合板で仕上げる。
・壁面を有効利用し、物を掛け易いように内装に有孔ボードを使用する。
・物は、全て目に見えるように収納するために収納扉などの建具は必要ない。
・適度な距離感で家族の気配を感じられるようにして欲しい。
狭小地の住宅で上記の要望を考慮した場合、いずれ空間が「モノ」で満たされることになります。「モノ」で溢れた住宅は「モノ」を収納するための「箱」と化してしまうことを危惧しました。様々な「モノ」があふれていてもそれらを受け入れ、「モノ」と「空間」を繋ぐことができる住宅の可能性について考えました。
そこで、この建築を作る上で必要なパイプやスイッチ、照明、報知器などの機能を持った小さな部位に着目しました。
本来、主張しないように扱われるそれらを機能ごとに着色することで、あえて主張させています。
この操作により様々な色を持った「モノ」を受け入れ、許容できる大らかさをもつ「空間の下地」を作り出すことができました。
どこまでが空間でどこまでかモノか曖昧になり、空間と「モノ」が新しい関係性を持つことを考えています。