敷地は、北側にある母屋の大きな庭と南側の歯科医院との間に挟まれた旧縫製工場跡地が選ばれた。施主は医院側に出入りする車の喧噪をしきりに気にしていたし、母屋側に向けてつくられた北側の開放的なスペースの処理に頭を悩ませていた。
医院側は人工的につくられた外部空間をもってくることで喧噪を和らげた。北側については、外壁に使った被膜の処理のことで施主とかなりの議論を重ね。最終的に半透明のガラスと適度な開口を得ることで解決を得た。また、施主は2階部分として吊り下げられた。S字の寝室に置くベットの納まりを気にしていたが、吊り構造のゆえどんな平面型でも可能なことと、下から見上げるカーブした天井の量感を見て納得していたようである。
サニタリールームや個室などのヴォリュームを散在させたのは、実をいうとできるだけこの建築の内部を歩かせたいという目論見があったためである。移動するごとにラチス柱と各ヴォリュームが重なり合うシーンは既にCGでスタディ済みだった。どうもこの目論見に気がついた施主が変更の要求をやたら突き付けてきた気がしないでもなかった。かくして建築は完成をみた。
資料請求にあたっての注意事項